この監督、やりたいことが多すぎるのかも。
1冊の雑誌を丸ごと映像化した奇作、『フレンチ・ディスパッチ〜』から早いもので1年と少し。
今作は架空の街をめぐる物語をめぐる作家をめぐる…という入れ子構造の極みみたいな映画。
しかし親と子、子どもと大人、喪失と再生という、初期作から共通しているテーマはしっかりと維持されているように感じた。
そして今作では、中年の到来を控える親が幼い我が子に向ける複雑なまなざしというのもまた新たな視点になっていたように思う。
それは多分、ウェス監督自身が年を増し、老いを実感してくる年頃になったことから導入された視点なのかもしれないと、なんとなく思った。
けれども、やりたいことが多すぎるのか、物語が複雑すぎて逆にどうしたいのかわからないというのが正直なところ。
かつてだったら、子どもたちの大会の日に宇宙人がやってきた!というコンセプトだけで一作にしてたと思う。
名優たちもほとんど出落ちみたいな使い方をされていて(とくにスティーヴカレルがあ…)、ウェス監督の世界でコスプレをさせられているような印象は拭えなかった。