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死刑にいたる病の8637のレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
3.9
抗うことができず、すっかり魅了されてしまった...しかし洗脳されてはいけない。目を見開いて対峙しているのは殺人者なのだ。
社会で生きるための策略が転じて、生活の裏で人を殺める。浸かった沼には偏愛が宿る。心理的に怯えさせ、殺人思想を流動させていく。
白石和彌監督の演出はガチだし、阿部サダヲの存在感に加え岡田健史の芯の強さが混在する面会室の緊張は凄かった。

久々に不条理な殺人鬼映画を観たが、こうやって平然を装う異常者が存在する以上、社会って全然生きやすくなんかないな。何の為に人を殺すのか、一ミリも心理は分からない。自分も含め、人間はどうして不謹慎な人殺しの映画を作りたがるのだろう。白石監督の答えは「自分にない、理解できないことを知りたくなる」だった。

ここまで深く入り込めたのは、演出力の高さと、あと映像美やライティングもある。面会室での心理の一致を映すプロジェクター、終始暗いからこそ目立つそれぞれの光も劇場で体感する価値がある。描写の残虐さから目を背けた場面もあるが、PG12としてゴア映画とは一線を画して、サスペンスを主体的に魅せるエンタメだった。
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