しらが

死刑にいたる病のしらがのネタバレレビュー・内容・結末

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

地元の栃木を離れ、東京で大学生活を送る主人公・筧雅也。
そんな彼のもとに、かつて20数人の少年少女を手にかけ、死刑判決を受けた男・榛村から一通の手紙が届く。その内容は、「立件された9件の事件のうち、最後の1件は自分がやったものではないので真犯人を探してほしい」というものだった。
雅也は独自に事件を調査するうち、榛村の犯行の真相だけでなく、自身の出自にも迫っていく。

白石和彌監督作なので、ある程度の暴力描写は覚悟して臨んだけれど、今作は予想の斜め上を行く仕上がりだった。ストレートなグロテスクさではなく、「痛そう」をとことん突き詰めた演出が多くてかなりしんどかった。

物語の展開については、雅也目線で榛村事件の概要を理解する序盤、雅也が榛村の息子という可能性が浮上・内に秘めた暴力性が露出する中盤、真相の解明・衝撃のラストを迎える終盤と、三段構えの展開でぐいぐい引き込んでくる。
面会室でふたりの像が重なる演出や、声に謎のエフェクトがかかる演出については「まぁ、うん…、悪くはないと思うよ」という印象。
イントロで榛村が川に撒いていた花びら(に見えるもの)が、殺した標的の爪だったとわかる終盤の演出は衝撃を受けた。

連続殺人鬼榛村を演じた阿部サダヲの、周囲に好印象を与える「普通の人」として標的に近づき、信頼を得た上で淡々と作業をするかのように殺人を犯す演技が鳥肌モノ。鑑賞していた私自身も、途中で「こいつ、それほど悪い奴じゃないのかも」と感じた瞬間があってゾッとした。
雅也を演じた岡田健史も、徹底して物静かな大学生を演じていて良かった。岡田くんの好演のおかげか、陽キャ集団との対比が割と露骨で少し切ない気持ちになった。

榛村と決別し、自分の人生を歩み始めた雅也の恋人が、殺めた子ども達の爪を収集していた榛村に共感するというラストシーンは、何とも皮肉というか、末恐ろしいと思った。
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