この映画の感想を長々と書こうとすると、確実に五里霧中になってしまうので簡潔にまとめてみようと思う。
誰が本当のことを言っているのか、何が正しいのか、見た(経験した)人の数だけ真実がある、とはよく言ったもので、そういう意味では黒澤明の『羅生門』に近い作品である。
だから、私は「真実」を「考察」するのをやめた。
さて、どこに言及してもネタバレになりそうなので、個人的にかなり印象に残った部分だけメモ程度に書いておく。
阿部サダヲ演じる連続殺人鬼と、岡田健史演じる大学生筧井雅也が、刑務所の面会室で話すシーンが何度かあるのだが、その演出がとにかく見事なのである。
アクリル板で仕切られた狭い部屋というシンプルな舞台に、本作の語り手である筧井雅也の心理状態をはっきりと映し出しているのだ。殺人鬼だが昔優しくしてくれたおじさんを目の前にした時の困惑、相手への同調、そして拒絶、それらが視覚化されて伝わってくる。
この演出があることで、いわゆる「コミュ障」な筧井雅也の心情の変化が、言葉で語られるよりも説得力のあるものとなっていて面白い。
最後のシーンで、「死刑にいたる病」の「病」という表記にとても納得してしまった。この世に溢れている一部の病気の特徴とは、つまりそういうことである。
まあ個人的に納得ができたと言うだけで、果たして作者がそういう意図を込めているのかは知らないが。原作も読んでいないので。
蛇足だけど、これ本当にR12なのか？
昨今の映画作品規制から鑑みたらR15でも良かった気がする。
グロ苦手な方はお気をつけて。
