イベリー子豚

人と仕事のイベリー子豚のレビュー・感想・評価

人と仕事(2021年製作の映画)
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点数をつけるようなタイプの
作品ではなかったので。



予告のイメージでは
俳優「二人」がコロナ禍における
「職場体験」をした『ショート・ウルルン滞在記』
っぽい対話式インタビュー劇。


実際のところはかなり違って
専門学生、保育士、介護士、スポーツ選手、
ホストクラブオーナー、
風俗嬢、養護施設、農家などの
日々の生活とお仕事あるあるを少しだけ掘り下げた
監督?ディレクター?がメインの聞き手の
『月曜から夜ふかし』×『ザ・ノンフィクション』。


「今年の架純ちゃん納め(2021年は6本目!)」&「志尊くん快気祝い」的なモチベーションだった
のでここはかなり肩透かしでした。

それでも
お二人がそれぞれ、もしくは一緒に
取材されるシーンはいくつかありまして、

架純さんは
「1つ1つ言葉を選びながら相手の考えも尊重し
ゆっくり丁寧に自分の考えをそれとなくハッキリ伝える」理想の先輩系

志尊くんは
「思ったことを取り敢えず口に出してみる。
相手の気持ちも考える。でも自分の意見もちゃんと
言いたい」親戚の兄ちゃん系

の自分に合った?素の?アプローチのされ方を
していた印象です。


問題はテーマと演出とタイミング。


まず監督や制作側がこの作品の
「終着点」があやふやなまま「見切り発車」したかの
ような非常に散らかった構成になってます。


そもそも「コロナ禍以前以後の変化」よりも
「現在の生活困窮者、働き手」に手当たり次第
フィーチャーしてるので
具体的なデータや改善策の提示も
驚きの新事実も特になく
ニュース番組のワンコーナーで
知り得るレベルの内容です。

最終的にこの映画を通して「何か変えたかった」のか
「ただ報道したかった」のか
「この状況下で働く意義を問う」つもりなのか
「時間と予算があったから」なのか分かりません。


演出は
チャプターごとに?挿入される、オリジナル?の童謡
がとにかく不快で邪魔でした。
そしてインタビューアーの男性の声が
全然、相手に寄り添ってない感じの
それこそ『夜ふかし』系で、バラエティならともかく
シリアスには向いてないですね。
最後の有村さんへの質問はかなり失礼な聞き方に
思えます。


冒頭のネオンの消えた、渋谷の街で
声を掛ける志尊くんも
この切り取り方だと
「ただのナンパ未遂の非常識人」に映るし
もっと編集の仕方があるのでは……


一番ダメなのはタイミングですね。

ワクチンもほぼ普及して宣言解除、鎮静化の今では
とにもかくにも遅すぎる。

遅くとも『花束みたいな』~『るろうに剣心』まで
の間に有料配信なり限定公開しなければ
「まぁこんなこともあったよねぇ……で?」
で終わりですよ。


この作品から連想するのは
「自分も不安で苦しい気持ちだけど
世の中にはもっと辛い状況の人や頑張って働いてる人もいるしな……
まだマシな方だよな……」のマイナス面で

これから「よし!こっから経済回復!」
「皆でなんとか踏んばろうぜ!」の
超前向き!右肩上がりの世界のムーヴに
全然マッチしてないです。

配給やスケジュールの問題はあるとは思いますが
これなら『空気階段のKOC優勝』の方が
遥かに勇気づけられましたよ。


総じて
映像の感じはキレイでスタイリッシュ。
インタビュー対象の方もガチ現場と言うより
「Instagramで見つけました」などこか
垢抜けたセンスだしてる
「なんかインタビューをいっぱい観たな……」
「施設の子たちには頑張って欲しい」
以外の感想はとくになかったですね。