くるぶし

ある男のくるぶしのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.5
原作未読。
やぁーーーーーーー大好物でした。期待以上。ストーリーは淡々と進む印象だけれど、その実、階段を着実に1歩1歩上っていくような積み重ねがきちんとある。大小問わず、テーマがころころと姿形を変えていくのに、最終的にはすべて調和していて、かつ 絶対にアクセルを踏み切らない、抑制の美学。「誰もが美しいと思える黄金比」を知っているみたいなラストだった。

人種や民族や血縁という、“個”では抗えないものに苦しめられている人が世の中には大勢いる。「戦っている相手がもはや誰なのかわからない」状態で、逃げ回るしかできない人も、あきらめている人もたくさん。
生まれる環境は選べないけれど、せめて躊躇することなく呼吸する場所は自分で選べる社会であって欲しい。誠実に生きることを茶化さない世の中であって欲しいと強く願う。

「差別はなくならない」ことを大前提に、どこで踏みとどまるかは個人の采配によるものが大きいから、誰かを叩くことで救われた気持ちになるような人間にはなりたくないと自戒。
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