理か

ある男の理かのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

本当のことを明かさない


もし、原誠が山で命を落とさなければ、今も
家族みんなで仲良く幸せに生活していただろう。原誠はもちろん、妻の里枝、息子の祐一、花、欠けていたものが埋められて充足した日々を送っていただろうに、な、と思う。

正真正銘凶悪犯の父親とは、似ても似つかぬ、
誠実で心優しい息子であるが故に、死刑囚の息子という事実を受け入れ難く、精神面のひ弱さも相まって心身共に弱まり、生活の場から姿を消し、非合法的に名前を変えて新生活を切り拓こうとした。

原誠が所属するボクシングジムの会長や同僚は、好意的に接し、出自を聞いても、親とは別人だと言ってくれる。
にもかかわらず、自殺行為をした末に飛び出して行く。
ジムの会長と養子縁組をして戸籍上も正式に苗字を変え、顔か気になるなら、整形しても良かった。
道は色々考えられたのである。

田所祐一の動機には納得いかない。
実兄が嫌なら、縁を切り、家を出て別に暮らせばいいのにと思うが、名前を変える相手として必要であったかと思うが、原に比べて理由が弱い。

本作タイトル『ある男』には、城戸弁護士も含まれる、と思った。
在日朝鮮人3世であり、裕福な家の女性を妻にしている。
詐欺で服役中の小見浦に、見抜かれ動揺する様や、TVで、在日朝鮮人へのヘイトスピーチの集会を観て苦虫を噛み潰したような様子には、
日本人であって日本人でないというわだかまりがしつこく付きまとい悩ませていることが窺える。
妻の不倫相手の存在を知っても知らないふりをして、今の生活を壊さない。
在日3世から帰化した身であることを知りながら、日本人の婿として受け入れてくれているからだ。だから、手放したくないのだ。
城戸の親や親族が全く描かれないのも、帰化と共に絶縁したのかと考えられる。
バーで会った初対面の男に言っている内容は、
原誠が、田口祐一に名を変え宮崎に来て里枝と知り合い、祐一の下に花ができ家族四人幸せに生きている様を自分のことのように話しているのだ。

<疑問に思うこと>
①離婚調停をしてもらったからと言って、横浜から宮崎まで呼ぶかなぁ。引き受ける方も。

②迎えに来た里枝の車中での会話、偽田所祐一について依頼する際、里枝との関係を話す筈。なのに話していなかった。

⓷②の車中、ハンドルを握っていた里枝の左手薬指の結婚指輪が長く映されていた。なぜか?

④城戸の義両親、皮肉に満ちながら、結婚を許した。城戸の妻に結婚前に何か瑕疵があり、城戸が結婚してくれて安堵しているのでは?
例えば、結婚できない男性の子を懐妊していたとか。

⑤自由奔放な城戸の妻、城戸が子供は可愛がるか、妻を相手にしないので夜遊び、不倫してまた懐妊。2人とも実子ではない。
理か

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