ゆう

パワー・オブ・ザ・ドッグのゆうのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.0
雄大な荒野を舞台に描かれる愛憎劇。
なんと言ってもロケーションが美しい。

ベネ様演じるフィルは男らしさを体現する人物。心優しい弟ジョージやジョージと結婚した未亡人のローズとその息子で医学生のピーターにも威圧的な態度をとる。
ベネ様の嫌な小姑っぷりが観れるのはこの作品だけかも?

前半はフィルの陰湿な嫌がらせやジョージと結婚したローズの見世物扱いなど観ていて辛い場面が多い。ちょっと退屈に感じる前半から中盤に描かれるフィルとピーターの関係。初めはピーターに対して嫌悪しかなかったフィルだが、ある出来事をきっかけに彼に興味を持つようになる。
ピーターに心を許し始め自分がかつて敬愛していた人物について語り出す。男らしさを異常に強調したがるのは自分の隠したい性的指向があるから。フィルもまたマイノリティ側の一人だった。

そして待ち受ける衝撃のラスト。

終わった直後はピンとこなかったけど、改めて序盤の記憶を掘り起こすと散りばめられた伏線に気づいてゾッとし緻密な脚本に驚かされました。
役者陣の繊細な演技あってこそ成り立つこの作品。最後まで彼らの表情に目が離せません。

トーマシンマッケンジーちゃんがこの作品に出てる事を知らなくて私には作中での唯一の癒しの人物。

テーマを主張するような映画ではなく、淡々と静かに観客に委ねる形で幕を閉じる本作。
数々の賞レースを賑わせてるのも納得の作品でした。
ゆう

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