ケネス・ブラナーが製作・監督・脚本をしただけあって故郷への思いが溢れる作品でした。北アイルランドの複雑な歴史を背景にした宗教対立に翻弄される家族とまるで日本の下町的雰囲気のベルファストの人々が9歳の少年目線で映し出されます。同じ街の仲間を分断するカトリックとプロテスタントの激しい対立も少年目線で描くことで対立の本質が見えてきます。ところどころ映像の運びにたどたどしさを感じたものの、この映画が素晴らしいのは、深刻なテーマなのに、全編、将来への希望とたくましい笑いが散りばめられているところです。ロシアによるウクライナ侵攻が続く今、犠牲になる人たちへ思いが重なります。
