バリカタ

ベルファストのバリカタのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.0
宗教より強いのは家族の絆

アイルランドであったこと勉強しなくちゃなぁって思いました。街の中でこんなことがあったなんて・・・知りませんでした。絵の綺麗さ、場面ごとの構図、迫力に驚きますね。全体的にスタイリッシュでまぁ格好いいんですよね。けど、描いているのは悲しく忘れちゃいけない歴史。

けど、本作は史実を克明に伝えることを目的とせず、監督自身が自身のルーツである街や家族を描いたのではなかろうか?と。強く生きていく人間讃歌であり「こうやって生きてきたんだぞ!こうやって生きていくんだぞ!」って胸を張り声高らかに叫ぶ、この地を故郷とする監督や、かつてのベルファスト出身者達の心意気が見えてくるようです。

かなりハードな背景なので、非常にヒリヒリするはずなんですが、ですが、バディの日常の目線をベースに描かれるからでしょうか、ちょいちょい入る箸休め的な微笑ましいエピソードがなんともいい塩梅でホームドラマを見ている気がしてくるのです。ま、ハードなホームドラマではありますが。ですが故に本作は「ファミリー」が主役なのだと思えるのです。そして語られるのは人間が生きていくために必要かつ大切な根本的なことをテーマとして描いているのではないでしょうか?それが、ラストのおばあちゃんのセリフのシーン。そしてその表情。心が熱くなりますよ。グッと込み上げてきました。

このテーマは普遍的なのでしょう。時節柄ではありますがロシアーウクライナの状況とどうしても重なってしまうのです。仕掛けてくる方の理屈、仕掛けられる側の悲しみ。何にも変わってないんだなぁと。けど、おばあちゃんのセリフに表される気持ちが持続し続けている限り、人間は理不尽な環境に抗ってタフに生きていくことができるんだろうと思います。そして一人では厳しいけど、家族あればこそ立ち向かい歩める未来もあるんだろうと。

辛いけど希望が見える(与えてくれる)作品です。