rage30

ワース 命の値段のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

9.11テロ犠牲者の補償金分配を担当した弁護士の話。

テロ事件犠牲者の補償はしなければいけない。
しかし、犠牲者家族に提訴されたら航空会社が潰れる(アメリカ経済が崩れる)ので、限られたお金を分配する必要があると。
そして、その特別管理者に選ばれたのが本作の主人公なんですね。

主人公を含めた弁護士チームは、あくまで中立的な存在なんですが、犠牲者家族にそんな理解をする余裕などあるわけもなく。
溢れる怒りや悲しみを弁護士達にぶつけてしまう。
ただでさえ、人の命に値段をつける嫌な仕事なのに、犠牲者家族のサンドバックにもならなくてはいけないのです。

中には精神的に参ってしまう人もいた事でしょう。
普通なら誰もやりたがらない仕事だと思うのですが、それを引き受ける弁護士達の姿には心を打たれました。
光の当たらない仕事だけど、彼らもまた英雄と呼んでも良いのではないでしょうか。

また、犠牲者家族の話を聞いていると、一口に犠牲者家族と言っても、いろんな人がいて、グラデーションがある事に気付かされます。
補償金よりも再発防止を望む人、補償金額に満足する人もいれば、そうでない人もいて、補償金を受け取りたくても受け取れない人もいる。
彼らが望んでいたのは、犠牲者家族として十把一絡に扱うのではなく、1人の人間として扱ってもらう事だったのかもしれません。

当初はかなりドライに接していた主人公でしたが、次第に犠牲者家族に寄り添い、補償基金プログラムも無事成功。
主人公の成長物語になっていたのは映画用の脚色かな~という気もしますが、主人公のモデルとなった弁護士は実際に個別聴聞会を開き、約2500人の遺族らと直接面談したとの事。
ここまで来ると、ほとんどセラピーやカウンセリングの領域な気もしますけど、そこまで含めて補償というか、決してお金だけが補償になるわけじゃないんでしょうね。

補償金の調整という地味な仕事にスポットライトを当てた事。
そして何より、誰もやりたがらない…しかし誰かがやらないといけない仕事を引き受ける人間の崇高さ、偉大さが描かれていて、個人的には見て良かったな~と思いました。
人間誰しも貧乏くじを引く瞬間はあると思いますが、そんな時は彼らの事を思い出して頑張りたいものです。
rage30

rage30