回想シーンでご飯3杯いける

キリング・オブ・ケネス・チェンバレンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

4.0
2011年にニューヨークで発生したケネス・チェンバレン射殺事件に基づいて作られた作品。モーガン・フリーマンが製作総指揮を務めている。

これまでにも多数作られてきた警察官による黒人射殺事件を題材にしているのだが、上映時間80分を全てドア越しのやり取りだけで構成しているのが凄い。

心臓病を持つ独居老人であるチェンバレンは非常時に備えてセキュリティ・サービスに加入しているのだが、ある朝方に誤って緊急ブザーのボタンを押してしまう。セキュリティー会社からの通報を受けアパートに駆け付けた3人の警察官は、ドアをノックして部屋の中を確認しようとするが、以前に警察官から嫌がらせを受けたチェンバレンは、これを拒む。

アメリカ社会の根底にある人種間の問題が、この僅かなやりとりのズレをきっかけに、音を立てて巨大化していく。

チェンバレンには警察官の姿が見えず、警察官にはチェンバレンが見えない。ドアの向こうの声だけで、これだけ凄いドラマを作り出せるのかという驚き。いや、脚色こそあるだろうが、話の骨格は現実に起こった事なのである。

上映時間は、おそらく実際の事件とほぼ同じに設定されているのであろう。まるで隣人になったような気持ちで画面に見入ってしまう。凄い体験だった。