ShinMakita

母の聖戦/市民のShinMakitaのレビュー・感想・評価

母の聖戦/市民(2021年製作の映画)
2.0

メキシコ北部の街。10代の少女ラウラを育てるシングルマザーのシエロは、おめかしして出かける娘を見送った。彼氏のリサンドロとデートなのだ。しかしそれっきり、ラウラと連絡がつかなくなってしまう。リサンドロにドタキャンされデートはなくなったようだが、家に帰ってこなかったのだ。心配するシエロの前に、ギャング風の若い男が現れる。ラウラを誘拐したから15万ペソを払えというのだ。恐怖に震えるシエロは、元夫グスタボを頼りカネを用意。しかし指示通り支払ったがラウラは戻ることなく、「ボスが給料をくれなかったから俺個人に5万払え」とさらに男から要求されてしまう。こうなると、顔の広い友人キケに警察に言わない方が良いと忠告されても、シエロはただ黙って待つことはできない。そこで警察にも相談に行き、パトロール中の軍治安部隊にも助けを求めるが、結局誰も動いてはくれなかった。意を決したシエロは、ギャングの被害に遭った女性たちから聞き込みをして「組織」の実態を探り始める。溜まり場・住居・恐喝場所などを尾行捜査で割り出し写真を撮っていくシエロ。しかしその行動がギャング側に知られてしまい…


「母の聖戦」


以下、胴体一つにネタバレ二つ。


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ダルデンヌ兄弟とミシェル・フランコが製作に噛んでいる、メキシコの闇を描いた作品。「消えた子供を探す母親映画」が無数にある中では「息子の面影」に近いですね。ただ〈探す〉という行為に留まらず、ラマルケ中尉という飛び道具で〈反撃〉に出るのが新しい点。


うーむ…

中尉の法律無視な行動には若干溜飲が下がりつつも、鈴木雅之よろしく〈違う違う、そうじゃない…〉と呟きたくなった俺。そもそも、あの悪い兄ちゃんが「親父」とボスを呼んでる時点でイネス率いるギャング団とは別のグループって解るじゃん。ラストに何とかゴールに辿り着くけど、なんかモヤモヤするのが残念でした。シエロさんのラストカットが意味するものは観客に判断を委ねているけど、それも何だかなあ…「親父」の正体をきちんと見せて哀しい結末で締めた方が映画的にはスッキリすると思うけど。ただ、それはあくまで作劇的な文句であって、「暴走する母性」というテーマの描き方については満点だと思います。別れた夫の自己中にグッと耐えしのび生きてきた市井の主婦が、娘を見つけ出すためには暴力も法の逸脱も銃を握ることも厭わなくなるという変容を静かにドキュメンタリータッチで描いています。その真に迫った感じは素晴らしい出来。主人公のモデルになったロドリゲス夫人が監督のリサーチ中に殺害されているというショッキングな事実も含め、実話の重みというのが堪能できる一本です。

…個人的には、劇映画としては「息子の面影」の方に軍配。でも、こちらもセットで観る価値ありと言っておきましょう。ぜひ。
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