くさば

オマージュのくさばのネタバレレビュー・内容・結末

オマージュ(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

60年代に活躍した当時珍しい女性映画監督、最後の作品のモデルは韓国初の女性判事、そして現代で映画監督をする主人公の3人の女性が織りなす物語。主演がパラサイトに出ていたイ・ジョンウンと聞いて気になって観てきました。予告で何故かこの俳優さんに惹かれて、売れない映画監督…という役どころもよかった。いわゆる身近に感じる中年女性(しかも少し恵まれていない)というのが気になったのかな。そして東アジアの自分と変わらない見た目の人種の俳優さん、というところも重ね合わせられるところがあったんだと思う。歳は違うけど、自分もいつか行く場所に立っている人を見たかったのかも。

50年前の女性映画監督の孤独の描き方はよかった。多くは語らず、でも己の努力ではどうしようもない嘆き、諦め、悲しみが伝わってきた。現代の主人公にも女として妻として母としての呪いはのしかかっている。それが昔ならなおさら。夫は妻を養おうとせず、世間からも仕事よりも母親業をしろと言われ、息子や義理の親からも夫と子供を大事にしろと言われる。彼らは彼女を支えないのに。彼女に多くを諦めさせるのに。息子はわりと可愛げのある感じだったけどご飯くらい自分で準備せんか!と思った。

内容は少し物足りないところはあった。隣から聞こえた声のこととか、ささやかでもいいから主人公が再起するところとか、主人公の映画に対する意思とか、ホン監督の娘さんの話を聞くとか、主人公が脚本を書くのが苦手な理由とか色々。あと女性判事のことももうちょっと知りたいな!と思った。女性初の判事で、のちに夫に毒殺される。映画ではいい夫として描かれ、監督はそれを気に入っていなかった。(主人公がその流れを変えるのか?と勝手に思ったけどそんなことはなく)

でも全体的には面白かったな、と思う。ずっとイ・ジョンウンさんに引き込まれていたし喫茶店で写真を撮っていたおじいさんの老いたことに対する悲しみや映画を編集していたおばあさんがフィルムを繋げていくところ。昔を振り返って浮かび上がってくるホン監督のこと。穴の空いた映画館で、フィルムをかざすところ。老人の住む家もよかった。飽きるところはなかったし、観ていて楽しかった。

すごく推せる!という訳ではないけど、自分は好きだった。この映画の雰囲気というか、やっぱり俳優さんの力なのか。ただまあ物足りなさはあった。少しでも主人公の仕事が評価されればいいなと思ったけどそれもなく終わるし。でも彼女は多分次も作る、ということは伝わった。よかったなー。
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