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マイスモールランドのKtsuneのネタバレレビュー・内容・結末

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

普通が普通じゃなくなる怖さ。
何故普通に暮らしてはダメなのか?

学校で友達とバカ話したり、
バイト先の男の子に恋焦がれたり、
KPOPを友人と踊って楽しんだり、
そんな日常を入管法が立ちはだかる。

フィクションながら、
ドキュメンタリータッチで描かれるリアルさ。
ハッピーエンドは期待できないが、
この日本で起きている現実を直視させてくれた佳作。

難民申請が通ることは皆無に等しく、
かつ、申請不可後の仮放免での制限。
普通の暮らしができなくなる不都合さ。
働けない、県外出られない、病院実費。
国から出て行けと言わんばかり。

この国では、所謂ガイジンは他所者扱い。
なので、悪気はなくても排他的な言動をしがち。
主人公サーリャが働くコンビニにて、
老女がどこの国の人と語る場面はそれだ。

他国の人は他所者という概念が、
この国の根底にあることが見え隠れする。

サーリャは父マズルムが入管に拘留されてから、
前半とはうって変わり肌の温かみが消え、
眼差しも死んだようになっていく。

このギャップ。何故普通に暮らせないか?
それは入管法があるから。なかなか抗えない事実。

そんな中、コンビニのバイトで知り合う聡太、
反発していた妹アーリン、サーリャに寄り添う弟ロビン。
彼らが土台無理な壁がありながら、
寄り添って生き抜こうとする様に胸が締め付けられる。

ラストのサーリャ、父マズルムとの対峙する場面、
あの言葉をサーリャはどう受け止め、どう生きていくのか。
言葉にするのは簡単だが実際に体現するのはどれだけ困難なことか。

サーリャを演じた嵐莉奈さん、
実の親子という父・妹弟の関係性が
とにかく、切なく胸が締め付けられた。
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