バス行っちゃった

METライブビューイング2021-22 テレンス・ブランチャード「Fire Shut Up in My Bones」のバス行っちゃったのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

CMなんて見せられても、パンフ買う余裕もない奴にロレックスなんて。ぐ。

休憩中の映像だったりなんだりのおまけ充実でライブビューイングとしての満足度はずば抜けて高かったし、よく知りはしないけれども歌劇としても歴史的ななにかを見た気がしたものの、話の構造としては微妙か。

主人公については丁寧に追うものの、母親については端折り気味なため、最後の抱擁がいくらか唐突に感じられ、感動するよりも、どのタイミングで母親に末っ子を思う余裕ができたのか、その描写がどこにあったのかを思い出す方に考えを持っていかれてしまった感じ。まあもちろん末っ子のことを愛していないわけではなかったし、ほかの子どもたちが育って手がかからなくなったからということなのかもしれない、実在の人物だから好き勝手に味付けできないというのもあったのだろうとは思うけど。

反面、主人公についての描写は、こんな書き方をするとアレだけど面白くて、真面目なシーンや悲しいシーンはもちろん、昭和の暴走族の一年目じみたカッパクラブの試練だったり、素人童貞感漂う早すぎる不幸語りからのあなたとは遊びだったの宣言など、エンタメ的な緩急が効いていて、オペラというか歌劇特有の同じことを延々歌うという時間が引き延ばされる感覚がしんどくはあったものの、それでもきちんと追いかけていける見やすさがあってよかったっす。

カーテンコールの涙も、あの歳であがった舞台だったからこそのものだろうし、劇中の色々と響き合うようでもあって、とても貴重なものを見せてもらった感じ。

きっと声や音なんかも同じ空気の中で体感したら全然違うものなんだろうけど、実際に見るチャンスなんて路上版すみっコぐらし(ソロ)の三つ手前みたいなこの人生にあるのかしらん。嫌ねえ。