バス行っちゃった

リスペクトのバス行っちゃったのネタバレレビュー・内容・結末

リスペクト(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

エレベーター内のあの一撃は人として最低だったが、斬影拳の初歩としてはそこそこだったのではないかとか思ってしまった己を恥じる。

よかったはよかったんだけど、個人的に原作ものだったり、こうした伝記物だったりする作品の場合、その面白さを感じるためにどれだけ外部の情報に依存しているかというのが評価の基準のひとつとしてあって、基本的にその作品単体では面白さがわかりづらい、原典や資料、パンフレットなどをあたらないと肝心なところが浮き彫りにならないといったようなものがあんまり好きじゃないというのがあって、この作品のアレサ・フランクリンやバプテスト派の巡礼がどうだったかについての描写も、なんというか、淡白というのではないのだけれども、一瞬さらっとツボを突いていく類の、過不足のない客観的とも言えるような距離感の表現が続くので、隙間を埋める知識なりなんなりを持ってないと、すごく面白いというまでの体験にはならないのではないかとはちょっと。

ただ、この物語におけるアレサの葛藤やエモーションは歌でも語られるので、それに加えて何かを補強するとかしてしまうと説明や押し付けということになりかねず、そう考えると、見終わったあとに思い返すことではじめて意味がわかるというような、結構ビッタビタなところをついたバランスの省略と取捨選択だったのかもとも思うので、ならばまあこちらの想像力だったりが今日も変わらずクソだったということなのでせう。

あと、先に挙げた評価の基準も相まって本来は嫌いな最後のご本人登場という伝記映画のパターンが、この作品に関しては、物語を通して現実のアレサ・フランクリンという人の年輪の形が伝わるような作りになっていたこともあって、本人の姿や歌声によって劇中のアレサのキャラクターも狂気の入り混じった凄まじいイメージのものに変えてくれたので、こういう形があるのなら物語外部の情報について何でもかんでも目くじらをたてるというのは違うのかなとも。まあでも毎回パンフレット買うほど小遣いに余裕はないので、知識の格差が面白さに影響するようなのはやっぱ勘弁。結局金の話かよ。