このレビューはネタバレを含みます
世界を破壊しうる力を生み出した科学者の倫理的葛藤。
量子力学や宇宙の神秘への知的好奇心に対する純潔さは、薄汚ねぇ覇権争いの最中で早くも埋没する。
20キロトンの破壊力に崩れてゆく人間と爆炎が、いつの間にか取って代わって夢想するようになった。
ブラックホールを既に見出し、理論物理学の天才オッペンハイマーの脳内では原爆で世界が破滅するというシミュレーションが常人の想像よりも遥かに鮮明だったのではないかと考えると、
「こんなやべえ兵器作って、日本で破壊力を証明したのになぜ分からないんだろう、分からないどころか水爆作ろうとしてんだけど。。。」
という苦悩を持つのは納得がいく。
オッペンハイマーの苦悩する姿そのものが軍拡競争、核へのアンチテーゼと捉えられないか。