ジジイ

イニシェリン島の精霊のジジイのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。監督のマクドナーは初めから主演の2人の役者を想定していたのだという。友達同士の小さないさかいが、やがて笑えない戦争へと発展する。時は1920年代で折しもアイルランド本島は内戦の真っ只中。そんな世相に呼応するかのように突然の絶交を言い放ったコルムと、訳がわからずひたすら困惑するしかない哀れなパードリック。事態がエスカレートする後半は流石にやり過ぎだろと苦笑しながら観ていたが、2人の役者の素晴らしい演技に完全に惹き込まれてしまった。厄介者のドミニクを演じたバリーコーガンもよかった。音楽好きなら指を落とすことはないだろうから、すでに死を意識して自暴自棄になっていたんじゃないか。なんて期待も持ってしまうけど、ありきたりな理由付けは物語を陳腐にするだけだ。どんな些細なことからでも人は人を嫌いになれるし、憎み合えば合うほどエネルギーを浪費消耗する。争うことの愚かさと不毛さを、今なお繰り返しているこの現代に改めて問いかけた作品なのかもしれない。
ジジイ

ジジイ