これは面白かったなぁ。
「スリービルボード」のマーティン・マクドナー監督作という事で、それぞれのキャラクターの言い分に一理あると思わせながら、それぞれが自分の事しか考えていないために人間関係が泥沼化していく様子を笑かしながら描いていく、意地悪な感じが凄く良かったです。
あと、趣向ややる事がほとんどない田舎独特の嫌な感じの演出も上手いなぁと思いました。泥沼化していく人間関係を描く背景では、アイルランド本土の紛争が起こっており、その様子が見えるイニシェリン島では殺人や噂話が田舎の数少ない娯楽として回っているという、心底歪んだ田舎観が滲み出ていました。
全体的にアンドレイ・タルコフスキーとイングマール・ベルイマン作品を思い出させる映像で、もろに「サクリファイス」なシーンが出てきた時は、それを映画館で観れたという不思議な高揚感もありました。あと、死神の老婆は「第七の封印」の死神のイメージなのかなぁとか思いました。
今年初映画館だったのですが、かなり楽しい映画で良かったなぁと思いました。