ぼうるちゃん

イニシェリン島の精霊のぼうるちゃんのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.8

スリービルボードよりも見やすいけれど、田舎から出てきたものとしての「うむ」的な深い頷きの重さとしては、こちらが上か。

しかし、スリービルボードのマクドーナンの聖職者への突っ掛かりとか、犠牲になる女、そして今回はポリスのヘルさと犠牲になる息子。
「私も権力嫌い!大嫌い!でも怖いんだよね奴ら!ほんとやだ!」みたいなキャピキャピテンションで楽しむ方向もあるし、やっぱ息子側からしたら、ねぇ、、、と。

やっぱり子供って逃げ場がない。守るべきは子どもだな、、、と夫と謎の誓いを立てる。
とはいえあの息子の冒頭の「ウッ」となる濃密な欲求の現れみたいなものには胃もたれ。本編以上にもたれそうになる。

おっさんたちについては、どっちもがどっちもで「なるだけ関わりたくないですね」なんだけど、でも確かに人生ってその葛藤ある。一方で生きてるだけで儲けもんじゃんみたいな脱力の方向もありえるわけで、でもその脱力だってコミュニティから脱した上での1人での時間から生まれるものだったりもする。

付かず離れずが私にとっての解だけれど、コリンファレルのストーカー感たるや。
それでも最後のマッドアイムーディの方のおっさんの境地、フェーズというものは、明らかにコリンファレルによってもたらされたものであり、そういう意味では関係性は進んだ?変化した?のではないかと思う。

そういえばアイリッシュの夫が暗い顔で「自分の地元の小学校の子どもたちも悲惨だった、、、」と言っていて私も地元の不幸自慢はできない空気に。

いつか元気な時にでも彼の地元の地獄話も聞いてみたい。

しかしモーツァルトだしに使うのにはちょっと笑う。私も割とモーツァルトだしに使うというか、あんなにわかりやすく天才で最低で無縁仏な人っていないものな。
昔、何かで聞いたがモーツァルトは若者?女性?のピアニストが上手に弾ける?的な話だったか。それでもあのコワモテおじさんはモーツァルトを口から滑らしたりして、不思議な親近感が湧く。爪が甘い!解像度が低い!でもいいのよ結局ひとり相撲なんだから。そしてその相撲の方向が滑稽なほど頑固。面白い。
でも今考えると明らかに共依存みたいなアレだよね。ふぅ!

最後に。コリンファレルが相変わらず渋いお顔でイカす。
私コリンファレル好きなわけでもないのに、付き合うならコリンファレル!みたいな部分がある。なんなんだろうこの気持ち。