まほ

イニシェリン島の精霊のまほのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
"優しさ"で歴史に名を残すか。

舞台はアイルランド内戦が勃発する1923年。
日本版のポスターのキャッチコピーにもある
「すべてがうまく行っていた、昨日までは。」
という言葉には
このアイルランド内戦が起きた背景も
含まれているのではと思った。

昨日までの仲間が今日になれば敵。
ただのおじさん2人の諍いが
想像を超えた展開へとエスカレートしていく。
島の中の閉鎖された空間、
ゴシップが唯一の娯楽、
そんな中で余生を過ごしていくことに
耐えきれなくなる人もいれば
そのままで良いという人もいる。

こんな小さな島の小さな問題は
私たちのどこの世界にも通ずるものがある。
それを描いた今作、
マクドナーの脚本作りに圧倒された。
戦争だって始まりは小さなこと。

予告を見たときはいきなり友達に
「嫌いになったから絶交する」と
言われてコリン・ファレル可哀想……
そりゃ眉毛もハの字になるわな……と思ったが
ブレンダン・グリーソン演じる
コルム側の気持ちに段々傾いていくこの映画。

そして何よりも演者で素晴らしいと思ったのは
ドミニク演じるバリー・コーガン。
もうアカデミー賞助演男優賞獲ってほしい…
(他見てないから分かんないけど……)
あんな何かが憑依したように演じられるのは
アンタしかいないよ………天才かよ。
終盤は彼の"優しさ"に対する見方が
痛いほど伝わってくるほど………

映画に出てくるロバやワンコ、他沢山の動物たち。
彼らも素晴らしい役者さん。

アイルランドの風景がとても良かった。
そしてコルムが弾く音楽、
あの場所の文化だから分かってはいるけど
「無印良品」が頭から離れなかった。
まほ

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