幽斎

パラノーマル・アクティビティ7の幽斎のレビュー・感想・評価

3.6
恒例のシリーズ時系列、製作順
2007年 5.0 Paranormal Activity オリジナル、映画史に残るスリラー
2010年 4.2 Paranormal Activity 2 続編だが中身はオリジナルの前日譜
2010年 4.0 パラノーマル・アクティビティ/TOKYO NIGHT 日本版続編
2011年 3.8 Paranormal Activity 3 3作目だがオリジナルの18年前
2012年 3.6 Paranormal Activity 4 4作目だが続編の5年後
2014年 3.4 Paranormal Activity The Marked Ones スピンオフ
2015年 3.8 Paranormal Activity 5 The Ghost Dimension 完結未遂(笑)
2021年 3.6 Paranormal Activity Next of Kin 本作、リブート
2023年 Paranormal Activity The Other Side 完成予定

※パラノーマル初心者の為のお薦め時系列視聴順
①パラノーマル・アクティビティ3
②パラノーマル・アクティビティ/呪いの印
③パラノーマル・アクティビティ2
④パラノーマル・アクティビティ
⑤パラノーマル・アクティビティ/呪いの印のラストシーン
⑥パラノーマル・アクティビティ2のラストシーン
⑦パラノーマル・アクティビティ/TOKYO NIGHT
⑧パラノーマル・アクティビティ4
⑨パラノーマル・アクティビティ/呪いの印
⑩パラノーマル・アクティビティ5
⑪パラノーマル・アクティビティ/ネクスト・オブ・キム
コレを書く為に手持ちのBlu-rayを全て見直した自分を誉めて欲しい(笑)。

「Paranormal Activity」アメリカ造語で本来はアンブレラ・タームと言うが、科学では立証できない超常現象を心理学ではParanormal phenomenaと呼ぶ。偶然では説明が難しい事象を「心霊現象」と言うが日本は超常現象と心霊現象が「ごっちゃ」←漢字に変換できない、関西弁かな?。「パラノーマル・アクティビティ7」日本独自のタイトルは完全にプレイングミス。AmazonPrimeVideoで鑑賞。

ゲーム・デザイナーOren Peliが、アイデアをJason Blumに話した事から物語は始まる。当時のBlumは無名に近いプロデューサー、本シリーズを手掛ける事でBlumhouse Productionsも、一躍メジャーに成る。シリーズは2人を億万長者にした記念すべき作品。製作費16万円が、最終的に200億円以上に化けた。ハリウッド史上最強のコスパ作品として、記録は未だに破られてない。

モキュメンタリー、ファウンド・フッテージ、POVの金字塔「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」が1999年。ブレア以降に様々な模倣が生まれては消えた。イスラエル人のOren Peliが、アメリカで一人暮らしをした時の実体験を元に脚本を書き、僅か一週間で制作。出演も無名の俳優、撮影は監督の自宅、編集も自前のパソコン。DVD化した作品を見たメジャー、パラマウントの幹部が「これはイケる!」配給権を獲得したが、劇場の理解が得られず全米で僅か12館の上映に留まる。

しかし、噂を聞いたSteven Spielberg監督が「こりゃ面白い!」リメイク権を獲得。だが、寸分の狂いの無い脚本にオリジナルを超えるアイデアを思い付かず、権利を返した時、無名の新人Oren Peliが、レジェンドSpielbergに「こんなエンディングも有るんですけど」素材を見せたら「馬鹿だなぁ、コッチの方が絶対にウケるよ」。再編集と新しい結末に変えると全米1位を獲得した、映画って本当に面白いですね(淀川長治風(笑)。

スピンオフ「呪いの印」質的にも興業的にも惨敗、パラマウントは「5」で強制終了を決断。シリーズ初の3Dだが、既にOren PeliとBlumの間に看過し難い隙間風がビュンビュン吹いてた。ハロウィンを念頭に毎年の様に公開されたシリーズだが、Oren Peliは「インシディアス」に御執心、フロリダの豪邸に住む事が出来たパラノーマルを軽視した。

Blumはパラノーマルには、まだ可能性が残されてると意欲的だが、Oren Peliは「5」の脚本も新人Adam Robitelに丸投げ。映画としては悪くないが、根幹であるモキュメンタリー、ファウンド・フッテージ、POVは3Dと共に忘却の彼方。因みに彼は「5」で認められ、レビュー済「エスケープ・ルーム」大ヒット。シリーズは幕を閉じた、筈だった。

しかし、パラマウントはレビュー済「ハッピー・デス・デイ」成功に導いた、Christopher Landon監督に新作の脚本を秘密裏に依頼。因みに彼は「2」「3」「4」の脚本、「呪いの印」で監督デビュー。先に呼ばれたBlumは新作についてスタンドアロンを主張。Oren Peliはレビュー済「ミッドサマー」を念頭に、プロジェクトを始動。監督の成り手が無い中で、レビュー済「アンダーウォーター」William Eubank監督に何とか落ち着いた。

原題「Next of Kin」近親者で分る通り、ナンバリングの無い本作はシリーズから独立したリブート作品。本家の続編では無く、登場人物も一新された。シリーズの象徴「Demon」悪霊は、キリスト教の悪魔として旧約聖書「トビト記」登場する「Asmodeus」アスモデウス。ヘブライ語で滅ぼすを意味する「√」の語源とも言われる。

Blumはインタビューで「本作を観るで有ろう若者は、オリジナルが公開された時は、まだ5歳とかだろ?。観客を惹き付ける為には、今までと全く違うイントロダクションが必要」と述べた。オリジナルの興奮を知る世代では無い、其処でキリスト教に纏わるアスモデウスを新しいディーモンとしてインスパイアした。

「トビト記」登場するAsmodeusは、サラと言う美しい娘に取り憑き、彼女が結婚する度に初夜に夫を絞め殺した。コレを7回連続で起こした為、彼女は悪魔憑きと恐れられる。サラの住む街にトビアとアザリアと言う2人の若者が訪れる。アザリアはトビアにサラと結婚したらと勧めるが、トビアは怖気を震う。アザリアは「魚の内臓を香炉に入れて初夜に焚けば大丈夫」強引に結婚させた。迎えた初夜、アザリアが言う通り香炉を焚くと、アスモデウスは逃げ出し、大天使ラファエルの姿に成ったアザリアが捕まえた。トビアはサラと無事に結婚。此の聖書の意味が分ると、本作の謎も解けるだろう。

監視カメラをアッサリ捨てPOVに仕立てた為、既視感の強い路線変更で、正直フレッシュ感も乏しい。一番大事な「パラノーマルアクティビティ」を観てるんだ。と言う観客の潜在意識まで遠ざけた為、独特な緊張感にも欠ける。暗闇のシーンは「REC」を彷彿とさせ、物語も別の作品で見た展開ばかり。無意味な時間の浪費が過ぎて逝く。

一応真面目に考察するなら、カンヌ映画祭で前代未聞のバッシングを浴びた問題作。マルチクリエーターVincent Gallo監督「ブラウン・バニー」が元ネタ。寧ろ本作の後に「ブラウン・バニー」を観ると、妙な一体感にお気付き頂けるだろう。ブラウンは本編の殆どがラストシーンの助走と言って良い。モノ好きな方は一生の思い出に為るだろう(笑)。

POVの良さとは、予想外の「何か」が映り込んでしまう、予測不能なサプライズに興味をソソられるが、モキュメンタリーなのに不安感を煽るBGMを流すとか、完全に敗退行為。カメラ・アングルが自然。つまり、見易い角度で撮影された映像では、もうPOVすら捨てた普通のスリラーにしか見えない。パラノーマルアクティビティの掟とも言えるエンドロール、無音の中に重低音。を、監督は自分の色を出したいと、音楽でフィナーレと言う暴挙。「パラアクと思わなければ楽しめる」人に薦める時点で死に等しい。

本作の出来にBlumは相当にご立腹の御様子(笑)、「もうフランチャイズには戻らない」と絶縁宣言。慌てたパラマウントは「インシディアス 最後の鍵」大失敗した、Oren Peliに「お前、なにサボってんだ!」相当なお灸を据えた。ブラムハウスとの仲介を止めるゾと一喝。現在は続編ナンバー6「The Other Side」に向けて反省したOren Peliが久し振りに担当。ケイティとクリスティの子供時代の家に引っ越した4人の友人が登場。本作に一番似てるのはリスペクトした「グレイヴ・エンカウンターズ」かも(笑)。

陰陰滅滅、アナイアレイション、Folk horror風味のパラノーマルアクティビティ。
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