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ラーゲリより愛を込めてのblacknessfallのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.0
知り合いの中で一番バカな後輩のオススメー。ハイポテンシャルなバカでしかもまだ伸び代を残してる。もう驚くことはないだろうと安心する度にバカ更新してくるバカ界の大谷⚾️なんだ。コイツがどれだけのもんか知りたい方は『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』を読んでくれ。
バカのくせに映画が好きでけっこう観てるんだよ、コイツ。でも、見識はまったく当てにならない。『永遠の0』を絶賛するし、『アベンシャーズ エンドゲーム』を全然わからなくてつまらないと酷評したので、わからなくはないだろ?と思い、話を聞くとそれまでのMCU映画まったく観てないでエンドゲーム観てんだよ。そりゃわからねーよ😫、てか、普通そんなことしないよな、、そんなバカのくせに人に映画をススメてくんだよ。まったく観る気が起こらない。が、円滑且つ良好な関係を保たなきゃいけない事情があるんで仕方なく鑑賞。

先の大戦の有名なエピードだよね、これ。概要は知ってる。
シベリア抑留された山本幡男さんと収容所(ラーゲリ)の同胞達の感動秘話。
強制労働や過酷な自然と住環境、ソ連の赤化洗脳、いつ帰国できるとも知れない日々、そんな絶望的な状況の中、決して帰国の希望を捨てず前向きな姿勢と優しさで同胞達に接し収容所の生活に人間らしさと明るさをもたらした山本さんは収容所の精神的支柱だった。そんな山本さんは帰国決定前に病死してしまう。
山本さんは死ぬ前に遺書を遺した。家族へ届けてほしいと遺書を仲間に託し亡くなった。しかし、収容所は私文書を禁止していた。遺書が見つかると没収されてしまう。そのため、仲間達は山本さんの遺書の一部を分担して記憶し、帰国後、山本さんの奥様を訪ね各々記憶した遺書を届ける。シベリア抑留の中でも屈指の悲劇と感動のエピソード。

実話の映画化でこの話自体がドラマチックなものだから百田尚樹の小説の映画化なんかよりはるかに意義深い映画なんだけど、悲しいかな監督がすっかりダメ邦画製造機として再ブレークした感のある瀬々敬久なんで、俗っぽく安く、そして気恥ずかしくなるぐらいベタな演技、説明的な演出過多からくるモタついたテンポという、悪い意味でザ・邦画メソッドで撮られているからけっこう苦痛だった。
あの、泣かせどころで必ず力んで声高になって「今から泣きまーす」的なサインを出して本当に泣く演出、何でこんなに邦画のみで流行ってるの?この手の泣けます系はこれしかやっちゃいけないルールでもあんのかって言いたくなるぐらい、こればっかだよな。ダサくて白けるよ。
韓国の映画やドラマでもこういうのあるけど、邦画と違ってちゃんとエモーショナルの喚起に寄与してるよね、何が違うのかな?多分、それを使うタイミングと回数、そして演技プランだね。邦画みたく一辺倒ではないし無駄打ちしてない。マネしてほしい。

説明的問題。本作の最大の失敗はラストだと思う。感動の遺書リレーが終わり(かなりたるかった)、いきなり2022年に飛ぶ。
孫の結婚式でスピーチする山本幡男さんの長男。彼がこのスピーチで幡男さんの話をするんだけど、そのスピーチで本作のテーマを思いっきり噛み砕いて話しちゃうんだよ。ハッキリ言ってそれを説明するためのラストと言っていい。そんなもんいらねぇよ、言われなくてもわかるよ。そして興醒めするし何よりダサいよ😩

ダサいと言えば、帰国のシーン。収容所のみんなが乗る船を収容所のマスコット的な存在のクロって犬が追いかけてくる🐺。流氷の上を走りなんと海に飛び込むクロ🐺
それを見た船上の面々が「クロは山本さんだ!」「クロを連れて行こう!」とおかしなテンションにジャック・インし、船を止めせ「クロー!」「クロー!」と叫びだす。それに応えるように船に向かって泳ぐクロ🐺を船上に引き上げ「やったー、一緒に帰るぞー」と歓喜する。
思わず声だして笑っちゃったよ😆💣️✨
こんなベタな忠犬演出まで創作して泣かせようとするなんて安易にほどがあるだろって。流石、バカがオススメする映画は違うなー、瀬々敬久は泣き映画の撮り過ぎで才能腐らせたんだな😏と完全にコケにして笑ってた。
しっかし、調べたら、このシーン、実際にあった話で創作じゃないんだよ!驚いた。クロ🐺優しくて賢い過ぎるだろ😲
危なかった、映画館で観てても笑った自信あるし、この話知ってる方にそれを見られたら鬼畜だと思われたろうし冷や汗ものだぜ😨 てか、抑留者の皆様とクロ🐺、そして瀬々監督、バカにしてさーせんでした😭

贖罪で言うわけじゃないけど、前半の抑留描写は非常によかった。回想シーンで中国人捕虜(多分、民間人)を射殺したことがきっかけで虚無になり人間性を棄てた軍曹のエピードで日本の加害者性と戦争の残酷さをきっちり描いてたのと、ソ連が収容者を支配しやすいように日本軍の軍階級を維持して収容所同士にヒエラルキー作って統治するという卑劣なやり方を説明することで収容所の地獄のような空気感を再現してたとこは関心したよ、マジで。それに瀬々監督の『菊とギロチン』は女相撲とアナーキストを題にして日本の排他性と抑圧的な精神性を批判した傑作だと思ってるし。
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