きゅうげん

デューン 砂の惑星PART2のきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

今度は聖戦だ!!!
当代最高峰の名優そろいぶみで新たに映像化された、SF史に燦然と輝く一大叙事詩『デューン 砂の惑星』の後編!


サータガーによる掃討作戦の開幕戦でつかみはバッチリ。
原作では省略された潜伏生活について、ポールひとり旅の貴種流離譚的な難題とか砂上の歩き方の指南とかを盛り込み、産砂デビューに結びつける序盤は、スティルガーの信頼やチャニとの恋愛などをうまく織り込んでいてナイスな作劇。
そして、教母として深慮遠謀をめぐらす母ジェシカをはじめ、世代差・地域差により一枚岩ではないフレメン、皇帝のブレーンとして活躍するイルーラン姫など、キャラクターの改変やストーリーの脚色などはどれも建設的で好印象。
原作では唐突だった“命の水”をポールが飲むくだりは、説明づけも雰囲気づくりも丁寧で分かりやすくなっていましたし、原作ではしれっと投下され個人的にモヤった核弾頭をめぐっても、繊細な機微をもってあくまで抑止力にとどめるよう描かれています。
また原作勢衝撃の主人公カップル決別ENDは、現在の再映像化として英断だと思います。

ギルドやCHOAM、妹のアリアやレト2世などの未登場は人員整理として理解できるものです。
シリーズ第三弾が未定のいま、安易に大風呂敷を広げるのは危険ですもんね。
ただ、本作でのイルーラン姫の役割のふくらませ方や、成長後のアリア役にアニャ・テイラー=ジョイが登場(幻覚)というサプライズ、そしてなによりポールの覚醒から聖戦までを“恐ろしいもの”として描いているところに、やはり続編『砂漠の救世主』映像化を虎視眈々と狙っている感が……。

ガイウス・ヘレン・モアヒムが残したように、敵味方や善悪などの区別なく何もかもが相対化されていくのが、『デューン』シリーズの魅力のひとつです。ジェシカの狡猾さ、イルーラン姫の聡明さ、ポールの恐ろしさ、そしてチャニの怒り……。本作の改変ポイントは、それこそ『デューン』の精神性に適うものと言えるでしょう。
タブールのシエチ急襲シーンにて血みどろで呆然とする少年の姿には、生々しい戦禍の現実的な残酷さが表れていてあまりにもショッキング……。また死体を燃やす所業がハルコンネン&皇帝側からフレメン&アトレイデス側に転換するパラレルな構図も、相対化を如実に物語っているものと言えるでしょう。
ハッピーエンドで終わらせない、ヴィルヌーヴ監督の強い意志を感じます。


皇帝陛下のいまします居城のモダンなリゾートっぽさとか、ハルコンネン家の本拠地ジエディ・プライムの闘技場の合成っぽさとか、デザインの面でちょっと残念な感が否めない点もあったのですが、“砂遁の術”が気になるトビネズミとか墨みたいな汚ねぇ花火とか、それらを補って余りあるSFイメージの愛嬌で許しちゃいました。
それに「いざ決戦!」ってクライマックスで、遂にズンドコズンドコ♪なハンス・ジマーらしい音楽も聴けたのでOKです。
中盤のトルツメ編集には、「ほんとはもっと長尺だったんだろうな」と感じるところが多々ありましたが、まぁヴィルヌーヴ監督はディレクターズ・カットを出さないことで有名なので……。産砂デビューあたりまでをPART1に盛り込めば、前編もテンション高く終われたのでは?

この『デューン』前後編、あらゆる意味で2020年代を代表するエポックメイクな映画になったと思います。
シリーズ化の続報、待ってます!!!