ヨーク

デューン 砂の惑星PART2のヨークのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
3.8
本作の感想文を書こうと思ってその復習のためにとりあえず前作である『DUNE/デューン 砂の惑星』の感想文を読み直してみたのだが要約すると、映像は凄いけど全然話が進まなくて寝た、というものだった。あと神秘的な特殊能力を持った主人公が救世主として民を導くみたいな話の構成が古臭いなー、という感じ。うん、我ながら多分もう一度前作を見直しても同じような感想になるだろうなーという気がする。ちなみに上の要約だけ見るとまるでディスりまくっているように思われるかもしれないが、スコアは本作と同じ3.8でその数字は俺にとっては平均やや上くらいであると思う。ま、飛び抜けてってことはないけど結構面白かったよ、くらいのものである。
んで本作『デューン 砂の惑星PART2』がどうだったのかというとスコア的には同じ数値なのでまぁ面白かったですよ。全然余裕でチケット代の元は取れるでしょっていう出来でボロクソに言うような映画ではない。割と素直に面白かった。特に前作の感想と比べると、映像は凄いけど全然話が進まなくて寝た、という部分が今作では結構変わっていて、まぁ寝たは寝たのだが前作と比べたらお話はかなり大きく動いて戦闘描写も盛り盛りなので話が進まなくて退屈だったというようなことはなかった。
ちなみにストーリーとしては前作で陰謀のさ中王宮から脱出した主人公が合流した砂漠の民と共に帝国に反旗を翻すといった感じのもので、これも同じく上記した、神秘的な特殊能力を持った主人公が救世主として民を導く、という類型にモロそのまんまなのでそこは前作の時と同じように古くせーノリだなぁ、今時白人酋長的なお話かよという感じはした。ま、そこは原作自体が古いものなのだから仕方ないといえば仕方ないのだが、もうちょい現代的なアレンジとか観たかったなぁというところではありましたね。
でもそれ以外の部分というか、主にアクションや戦闘描写というものは大体全部面白かったですね。確かあの世界は設定としてバリアの技術が非常に独特で、一定以上の速度の物質は完全にシャットアウトできるがその代わりにスローな動きのもの(例えば人間が刃物を振るう速度)なんかは素通りしてしまうというような感じだったと思うのだが、それが戦闘描写によく活きていてケレンのある演出になっていたのが良かったですね。そういう設定のバリアなので必然的に接近戦がメインの戦闘となる。銃弾のような高速な攻撃はバリアに弾かれちゃうからね。んでそこで描かれる砂漠の民たちの戦闘術というものが、砂遁の術とでも言うべき待ち伏せ戦法とか音もなく敵を始末していく様とか、小太刀くらいの刃渡りの武器で格闘していったりだとかというものなのだが、そういう戦闘描写を観ているとそうかー! 砂漠の民はニンジャだったのかー! と目からウロコで大変面白かったというわけなのですよ。
いやマジでニンジャなんだよね、戦い方が。設定上のバリアの仕様があるから現代戦であるような制空権を取ってド派手な空爆とか、地上戦でも遠距離からの狙撃とかっていう戦術はほとんど使えないのでなんとか距離を詰めて戦うという近世以前のような戦いへと先祖返りしてしまうわけだ。んでそういう状況で不意打ち的に敵の裏を取るとなると、そう! ニンジャ的な戦術がメインになってしまうのである!
いやこれは面白かったな。遠未来SFの世界で行われる戦争が互いの身体能力に依存するような白兵戦なのである。ここはちょっとSF的な皮肉を感じる部分だったね。そういや砂漠の民たちは例のサンドウォームに乗って移動したりもするのだが、それもニンジャがガマガエルとかを口寄せしてファイナルファンタジーシリーズの召喚獣のように使役するのに似ているとも言えるので、やっぱ砂漠の民ニンジャ説は信憑性あるんじゃないですかね。そもそも見た目からしてニンジャっぽいし。これはデューンシリーズが終わったらヴィルヌーヴには是非山田風太郎の忍法帖シリーズとか映画化してほしいと思ってしまいますよ。何かドゥニ・ヴィルヌーヴといえば重厚SF作品! みたいに思われてそうだが、案外とバカみたいなB級ニンジャ映画とか撮ったら面白いものになるのではないだろうかという気さえする。
まぁ本作の感想としてはそんなとこですかね。ヴィルヌーヴってわりと奇抜なアイデアと安っぽいノリのB級映画の方が映えるのでは? という感じでした。多分次の第3部が完結編になるのだろうと思うけど、原作を冒頭しか知らない俺としては民を導く異能の英雄の物語っていうヒロイックなサーガからどう展開するのだろうかというのは少しだけ気になりはしますね。『ナウシカ』のネタ元の一つでもあるし、英雄が導く戦争の果てには敵も味方も関係なくみんな死んでしまいました…テヘヘ…みたいな身も蓋もないものを観たいような気がするが、まぁそこは楽しみにしておこうか。そういや先の展開といえば、これクレジットに名前はなかったと思うのだが主人公の妹が未来と思われるシーンで成人してる姿がアニャ・テイラー=ジョイだったと思うんだが、最近のハリウッドの大作はとりあえずアニャ・テイラー=ジョイとフローレンス・ピューを出しときゃいいと思ってんじゃないのか!? という気はしてしまいましたね。いやまぁ二人とも結構好きな役者ではありますが…。
まぁ3部作の繋ぎの映画としては無難な感じではないでしょうか。前作ほど気合いの入った映像美は無かったが、その分アクション多めで結構面白かったです。
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