昨年末くらいに公開された『窓ぎわのトットちゃん』以降『ロッタちゃん』の二作リバイバルや『リンダはチキンが食べたい!』や今月末に公開予定の『システムクラッシャー』というガキんちょ映画が目立っていると個人的に思っているのだが、本作『リトル・エッラ』も佳作のガキんちょ映画であった。ちなみにこの感想文中で言うガキんちょ映画というのはガキ向けの映画というわけではなく主人公がガキんちょ(それも悪ガキ的な感じ)であるという映画のことです。
お話は中々にシンプルというか無難な感じで、主人公のエッラちゃんは両親が休暇で出かけている間に祖母の実家に預けられるのだがそこの居心地が悪くて大好きな叔父であるトミーおじさんの元へと家出する。大好きなトミーおじさんと二人きりで過ごせてご満悦なエッラちゃんだがそこに招かれざる客が…。それはトミーおじさんの恋人のスティーブでかわいい姪っ子のエッラちゃんが目の前にいるというのにトミーはスティーブのことを気にしてばかり。おのれ…スティーブ許せん! ということでエッラちゃんがトミーおじさんを独り占めするためにスティーブ撃退作戦が始まるのである…というもの。
ま、こんなのは誰にでも少なからず心当たりがあるもので分かりやすいところなら妹とか弟が生まれて今まで自分に向けられていた愛情がその妹(弟)に注がれるようになってそのことに嫉妬する長男(長女)みたいなことですよね。もしくは自分の大好きな人が大嫌いな人と仲良くしてるというのが嫌だとか、そういう感情。そういったことは誰しもが子供の頃に経験することであろう。本作も正にそこで大好きなおじさんが他人に取られてしまうような気がするエッラちゃんの暴走コメディなのである。
そんなわけで見どころはエッラちゃんが行う叔父の恋人への悪戯の数々なのだが、個人的にその辺が別につまんないとまでは言わないが割とお行儀がいい感じでイマイチ盛り上がりに欠けるところはあったかなとは思った。正に無難という感じで悪くはないのだが特筆するほどに面白いというわけでもないという感じだったんですよね。俺としてはもっとシャレにならない悪戯とかしてほしかったのだが、エッラちゃんはその辺結構わきまえてる良い子でした。もうちょっと、こいつイカレてるわ…みたいな悪戯とは言えないくらいの悪戯を観たかったですね。
でもまぁそこも含めてよく出来た映画で、エッラちゃんの悪戯にしたってそのやり過ぎてはいないという部分も万人ウケを考えれば正解であろうと思われる。ほどよくいいお話でほどよく感動できて、ちゃんとエッラちゃんの成長も描かれるという意味では広くオススメできる秀作だと思いますね。トミーしか眼中になかったエッラちゃんの世界が広がる感じとかは実に丁寧に描かれていると思う。
まぁそんな感じで上記したように全体的に無難な悪ガキ映画なんだけど、個人的に白眉だなと思ったところは、両親が冒頭30秒くらいしか出てこないとこだったな。これはちょっとびっくりした。作中の時間経過は多分一週間かそこらだと思うのだが、何だかんだでちびっ子が一回り成長する物語だったらいいところで両親の出番はあるんだろうなと思ってたけど本作のエッラちゃんパパとママは冒頭30秒くらいしか出番がなくてラストシーンにすら出てこなかったからね。これは面白いなー、と思いましたね。先日感想文を書いた『リンダはチキンが食べたい!』でもそうだったけど、理想的な親としての大人の監督下ではない部分で子供の成長が描かれるんですよね。荒っぽい言い方すれば、ガキなんか勝手に成長するよ、っていう映画ですよ。本作ならトミーおじさんが臨時的な保護者になるんだけど途中でエッラちゃんの親(多分父か母のどちらかが兄弟なんだろう)に相談の電話でもするかと思ってたけどそういうシーンすらなかったからね。むしろ親の目が届かないところでこそ子供は成長するのだという感じがあってそこはすごく良かったですね。
あと作品全体を通した演出としては、サッカー大好きなエッラちゃんが練習し続けたシュートが結果的にパスになるというのも良い。これはサッカー好きな人間としては非常にグッとくる演出でしたね。
何よりエッラが超かわいいのでガキんちょ映画としてはそれだけで十分面白かったが、非常によくまとまっていて広くオススメできる映画ではありました。ま、広くオススメできるということはそこまで深く刺さったわけではないということでもあるのだが、でも十分面白い映画でしたよ。ちょっとスティーブがいい人すぎるだろっていうのはファンタジー感もありましたが。