拓風

ウーマン・トーキング 私たちの選択の拓風のレビュー・感想・評価

3.8
前々から気になっていた一本。

舞台や登場人物について述べるとある種ネタバレになるかもしれないので詳細は述べないけれど、それらを「前時代的なもの」に設定しているため、どの状況や時代でも通じる普遍的なもの、時代や場所を超越したテーマであると言えるのではないだろうか。
(この辺は詳細を語らないとうまく説明ができないけど、初見で「え?」となってほしい)

物語の大半が「密室での話し合い」と、システムだけ見ると「12人の怒れる男」のような会話劇ではあるものの、会話で状況が変化して何か覆していくといったドラマティックなものではなく、あくまで観念的、かつ宗教味も強い。そして女性達を主役にしたことで、その知性、思いやり、慈悲、怒り、葛藤、優しさなどが際立ち、それらは幾重にも重なり、観ているこちらに深く鋭角に突き刺さる。
また女性たちの中に立場の弱い男性を一人配置することで、時に環境によってはフィジカルではなくメンタル面で同様の問題を抱えてしまう危険性も感じられた。

納屋の二階で地味な服装をした女性達が夜通し話し合う姿は、ある意味静かで暗い。
その後夜が明け、答えを出し未来に向かう動きと明るさと対照的であることも印象深い。

キャストも個性的な方が多く魅力的。
「スリービルボード」で周囲と対立、孤立しながらも強硬姿勢を続けたフランシス・マクドーマンドは今作では全く正反対の意見を述べ早々に退場。それでも最後の部分では彼女の葛藤も感じられる場面も。
とても教育を受けていない人たちには見えないほど皆がロジカルではあるところが気になったくらいかな。
拓風

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