経年変化さんの映画レビュー・感想・評価 - 31ページ目

Hope(英題)(2019年製作の映画)

3.2

愛か情か、付かず離れずの男女の哀歓。
死への恐怖と薬の副作用でフィジカル・メンタル共に摩耗してゆく過程の描写は体験者ならではだが、これだけ尺を使うなら子供たちの動揺や痛みをもう少し刻印すべきでは。一方
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ホワイト・サン/White Sun(2016年製作の映画)

4.0

各々の政治思想を下地に点描される土着的慣習の道程から目が離せない。
あらゆるベクトルにおける大人たちの対人関係の隔たりは割とそのまま惰性に任せておき(悲観的観測の表れだろうか)、いざという時に躍動する
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チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)

3.8

マルコはハッピーエンドが大好きでした
マルコはハッピーエンドが大好きでした

マルコは…ハッピーエンドが大好きでした…

無伴奏「シャコンヌ」(1994年製作の映画)

4.4

極めて純度の高い音楽映画。リシャール・ベリ、バイオリン、地下空間、聴衆、全てが渾然一体となってその中核をなすグルーヴ感に震え止まらず。
ジョルジュ・ドンもびっくりなラスト15分。静かなる魂の咆哮

ミナ(1993年製作の映画)

3.4

量産型青春譚。演者がこちらに話しかけてくる演出にはクスッとくるけど。自死絡みで『天使が見た夢』とチョイかぶり。その際に開けた三面鏡に一瞬映る曇天無機質な街の風景がお気に入り

エレンディラ(1983年製作の映画)

3.4

マルケス原作。
恋なんてペストと同じだと吐き捨てる守銭奴ババアの最期に歓喜!

ラスト・ホリデイ(1996年製作の映画)

3.4

この年の東京国際ヤングコンペに一体何があったのかと調べてみたら、審査員にホウ・シャオシェンとセルゲイ・ボドロフが名を連ねていて妙に合点がいった笑

天使が見た夢(1997年製作の映画)

3.6

震えるほどの孤独に耐え、ほんの少しの愛で崩れてしまう

ライク・ファーザー・アンド・サン(1983年製作の映画)

3.2

しかしまあ『デビルスピーク』の後にこれを撮るかね笑。いずれにしてもカサヴェテスの無駄づかい

新しい街 ヴィル・ヌーヴ(2018年製作の映画)

3.8

技術面でだいぶ驚かされる。単なる白黒着色じゃなくそれらのグラデーションによってシームレスに場面転換してみたり、像を反射させてみたり、でもって重ねてみたりと予想の斜め上を行く表現力。ディゾルブだって何の>>続きを読む

夜霧のしのび逢い(1963年製作の映画)

4.4

是非『赤線地帯』と併せて鑑賞したい、公娼制廃止に伴い篩にかけられる娼婦らのアンサンブルドラマ。そこに横たわる悲喜交々と潰えぬバイタリティ。
サイドストーリー的な年配掃除婦の、『ラヴィ・ド・ボエーム』に
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城の生活(1966年製作の映画)

4.6

ドヌーヴのベスト。連合軍によるノルマンディー上陸作戦前夜の極めて重々しい空気を寄せ付けない、まるでお転婆娘がそのまま成人したかの様な人物造形が犯罪的にヤバすぎる。冒頭30分で点を線に繋げ、自国の占有を>>続きを読む

ビジル(1984年製作の映画)

4.0

ニュージーランド初のカンヌコンペ出品作品。
ところどころでエリセとの親和性も窺える幽玄なるショットの釣瓶打ち。眼福

エンジェル・ベイビー(1995年製作の映画)

4.2

ラストの橋のシーンは反則。
「飛ぶわけないだろう。僕は生きる」→タイトルへの回帰→泣

ヴィタリナ(2019年製作の映画)

3.4

20年間継続作業への気骨に対しては敬意を払うが正直食傷気味。
ヴェントゥーラが立ち上がった瞬間パンツの裾がストンッッて落ちるところが何故かすごく気に入っている

笑う男(1928年製作の映画)

4.4

サム・フリークス案件の極北。これは虐げられる者たちの敗北ではなくささやかな勝利である。見事と言う他ない伴奏音楽と物語の調和、コンラート・ファイトの上下で分断された表情が持つ吸引力、そんな彼の高らかなア>>続きを読む

殴られる彼奴(あいつ)(1924年製作の映画)

4.0

このロン・チェイニーはまさに道化の鑑。
おまえらどんだけイチャコラしてたんだよってツッコミを禁じ得ないあの蟻のショットが大好きで大好きで

素晴らしきサイレント映画Ⅱ@ヴェーラ

悲惨物語(1973年製作の映画)

3.6

極めて倒錯的な2つの分子が化学反応を起こすとき、眼前の世界が美しさで染まる事がままある

TENET テネット(2020年製作の映画)

4.0

ノーランにどうしてもこれだけは言いたい。次もまた面白い映画作ってねっと

白衣の男(1951年製作の映画)

4.2

機知に富んだ会話と陰影に富んだ映像が織り成す二律背反喜劇。
いかなる分野においても発展の裏に沈みゆく人々の悔涙アリ。ともすれば隅々まで熾烈な競争で溢れ返った社会構造を前にして、アイロニカルな眼光がとて
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さよならS(1998年製作の映画)

4.0

初ゾンカ。観る者に媚びない徹底した贅肉の削ぎ落とし方に惚れ惚れ。骨格はシンプルなのに様々な感情がわき上がってきて忙しいったらありゃしない

ギャンブラー(1971年製作の映画)

4.4

終盤の決闘が目撃できるのならば何度でもこの壮大な前フリを受け入れてみせよう。どこまでも三流なウォーレン・ベイティがダサくて格好良すぎてもう…。
『殺しが静かにやって来る』と双璧をなす雪ウエスタンの傑作

父よ(2001年製作の映画)

3.8

ジョゼ・ジョヴァンニが父へ贈る愛の手紙。極めてパーソナルな物語にもかかわらず禁欲的な画面構成が何ともこの人らしい。
ラストで自身原作『穴』のポスターがパターン違いで3枚も笑。そこからの「父さんまたすぐ
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れいわ一揆(2019年製作の映画)

4.2

想像していたよりもずっと“言葉”の映画。この世界(地獄)に裂け目を。10人の熱量に呼応する様にして、本作はそのおおよその座標を示しているのではないだろうか。要するに「今こそ立ち上がれド庶民」である。>>続きを読む

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)

4.2

白人警官を巡っての議論が絶えない現況とビンビンにリンク。映画という媒体を借りながら百矢報いてて痛快。銃器類ではなくスマホがリーサルウェポンとなるあたりもいまっぽくていい。警官側の私生活事情を垣間見せつ>>続きを読む

東京人間喜劇(2008年製作の映画)

4.4

今年の東京国際で上映されるらしいけど、日程合うか微妙なのでサンクス・シアターで一枠消費。

第一部『白猫』第二部『写真』→可視/不可視の相対立する要素で構築された人間の表層を絶妙な距離感でなぞる観察眼
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Some Freaks(原題)(2016年製作の映画)

3.8

マイノリティへの偏見によって生きづらさを抱える三人がX-MENの如き逞しさを獲得していく流れがよき。ファーストショットの後頭部のクローズアップが見事。
幾度も盛り込まれるパーティーイベントに辟易こそす
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マイアミ・ブルース(1990年製作の映画)

3.8

基本弛緩の映画だがオツムの弱い純粋な娼婦という珍妙なキャラを好演したJ・J・リーの存在で差し引きゼロ。酢の分量でA・ボールドウィンの人格をジャッジするくだりに興奮。
指を切り落とされる因果応報には「ざ
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行き止まりの世界に生まれて(2018年製作の映画)

4.0

『mid90s』からの梯子。互いが補い合っていると言ってもいい作品。この順番で鑑賞して正解。
家族という共同体を中心に据える事で社会断絶を浮き彫りにし諸問題を横切っていくその射程距離に驚かされる。離散
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.0

悪そうな先輩に気に入られようと必死こいてた同時代への回顧の念、あの頃から年月が経ち今だからこそすんなり咀嚼できる親の心情。バッチバチにせめぎ合うこの二項対立が本作の最大の旨味。
幾つもの亀裂がアクシデ
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霊魂の不滅(1920年製作の映画)

4.4

100年前の作品にしてこの豊穣さはもはや事件。夜12時直前にシェストレム死亡→鐘が鳴る→二重露光による幽体離脱→同手法で死神の馬車現る。一連の流れが不快な音と相まって観てるこっちが死にそうに。フラッシ>>続きを読む

⼈間シャララ宣⾔(2016年製作の映画)

3.6

YouTube期間限定配信。
渦巻く初期衝動。技術面での粗さもいいスパイスに。わりと出突っ張りな鈴木卓爾の安定感が逆に異質さを携え始めてジワる。
『ロストベイベーロスト』楽しみだけど1週間レイトのみは
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都会のひと部屋(1982年製作の映画)

4.0

ストに象徴されるように断絶・不寛容にもがく各人の露悪的な側面を歌にのせる事で幾重ものベクトルのパッションを照射。偏執者ミシェル・ピコリは異彩を放ってて強烈だし、そこかしこに点在する感情のクライマックス>>続きを読む