経年変化さんの映画レビュー・感想・評価 - 34ページ目

Tメン(1947年製作の映画)

3.6

セミドキュメンタリーを標榜するならもう少し外の空気を取り込んでも良かった気はする。アンソニー・マンが翌年の『裸の町』の存在をどう感じたんだろうなんてちょっと気になりつつ、偽造紙幣を光で透かしながら確認>>続きを読む

漂流ポスト(2018年製作の映画)

3.6

風通しのいいロケーションによる過去/現在の往来を経て例の場所で暫く停滞してしまう、彼女の心情がうまく反映されてる時間配分

黒い天使(1946年製作の映画)

3.8

自分の中で「コルサコフ症候群」についてググりたくなる映画第1位に浮上した

(1949年製作の映画)

4.4

極めて行動範囲の狭い子供を主人公としながら、『オオカミ少年』を下地とした展開のもどかしさと限定された舞台装置上で反復される上下運動だけでここまで面白くしちゃうだなんて。終盤『インディ・ジョーンズ』かよ>>続きを読む

危険な女(1946年製作の映画)

4.2

入れ子式の回想で時計の針を巻き戻していく叙述構造に痺れる。
肖像画の不気味さによって加速されるロバート・ミッチャム スーパーダイブの恐ろしさたるや。
僅かながら同情の余地を残し完全なファム・ファタール
>>続きを読む

ハニーランド 永遠の谷(2019年製作の映画)

4.2

世の喧騒から距離を置いてあらゆる命と共生してきた従来の生活が、闖入者によってその均衡を失っていく一部始終。映像として細大漏らさず拾いあげているわけではないのに、その瞬間瞬間の心理的変容を克明に刻むドラ>>続きを読む

戦慄の調べ(1945年製作の映画)

4.4

久しぶりに文句のつけようがない導入部と顛末を目撃した気がする。決して犯人は誰かというミステリーではなく、物的証拠が一向に浮上しない中で自身の罪を如何に受け入れていくかという緊張を内包したまま常にトップ>>続きを読む

Dressing UP(2012年製作の映画)

3.6

精神的外傷のステージ進行をモンスター(外見)として視覚化するアプローチがとってもクローネンバーグ。まさに現代社会の暗部を射抜く視座だが何だかそのへんに懐かしさを感じたり。野放しにすれば『ミディアン』み>>続きを読む

パラレルワールド・シアター(2018年製作の映画)

3.8

演者同士の付かず離れずの距離感、空中分解の苦味が爽快ですごく好みなんだけど、ラストシーンの○○に対する拒絶反応もものすごい。とりあえず自分の中で空美=天使が確定

ワンダーウォール 劇場版(2019年製作の映画)

4.0

学生闘争の残り香すら漂うその豊穣な空間に自身の大学当時の想い出が重なってしまいどうしたって泣けてくる。自分もよく忍び込んで麻雀ぶってました。
エンドロールみてて気付いた若葉竜也界隈にかかった人件費にジ
>>続きを読む

ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画)

4.0

自分の中でアルモドバルは『バッド・エデュケーション』あたりで完全に終わっちゃってた人なんだけど、8~90年代の諸作を回顧するように自身の矜持や痛みと向き合い創作への熱情を失っていない事を宣言してくれた>>続きを読む

はちどり(2018年製作の映画)

4.4

父権主義・学歴至上主義な当時の日常において、14歳という多感な年頃のうつろいやすい心をフィルターとして濾される人生そのものの機微。絶えず乱反射するそれの全てを今受け止めねば自分に明日はやって来ないと半>>続きを読む

いつくしみふかき(2019年製作の映画)

2.0

捨て垢が何回も観たとか言いながら高得点つけまくってんの笑う。おれなんか黒田勇樹がどこに出てるか分からんくて68回みたもんね

GODZILLA ゴジラ(2014年製作の映画)

3.4

つまんないけど武藤さんの造形がたまんない。生命活動の根幹を前に未曾有の事態に陥っていく人類、という構図もよき

地上波

遠い光(2018年製作の映画)

3.8

明らかに分断をおこしている現在の家族。一体過去に何があったのか?このモヤモヤする問いへの回答をひたすら反芻し、残った彼等に僅かに差す光に少しだけ安堵した

ぽんぽん/PONG PONG(2013年製作の映画)

3.4

行き場のない、しかし行き先を求めている鬱積した感情。どこにも着地できないまま続いていくであろう膠着状況に凹む

おもちゃを解放する(2011年製作の映画)

4.4

理屈が通らない黒沢っぽい不気味さが充満してる。
キノハウス感満載の打ちっぱなしコンクリート、そこそこの速さでヌルっとフレームインする松葉杖の患者、走っていない車。無機質な感触と蠢く暴力の生々しさにゾク
>>続きを読む

海へ行くつもりじゃなかった(2017年製作の映画)

4.2

澱み無き客観性に心底驚かされる。両者とも負の感情に縛られ気味であるはずなのに、なぜ画面はこんなにも澄み切っているのだろう。
現状からの脱却を希求するかのように、パントマイムを始点として増していく運動量
>>続きを読む

リトル・マン(2015年製作の映画)

2.0

あらゆる生き物が出てきて賑やかな割に物語が上手く肉付けされていないのできつい。ギミックを含めた絢爛さが上滑りしてる。一体何の罰ゲームかと

イヌミチ(2013年製作の映画)

3.4

二人の間から性行為を排除した主従関係がすこぶるエロい。
auさん太っ腹。働いたら負けな気がしてきた

エル・ニド(1980年製作の映画)

3.8

13歳設定のアナ・トレントがやばすぎる。妙に大人びてて厭世感すら滲み出た佇まい、時に少女の様な快活さを見せ、時に若さゆえの無思慮な発言をし、初老の男を翻弄する。
『シベールの日曜日』以上の年齢差が衝撃
>>続きを読む

彼女が結婚しない理由(1992年製作の映画)

3.2

石田ゆり子大好きマンとしては不覚ではありますが、鷲尾いさ子のメガネ姿の破壊力でライフゼロに

ケースのためにできること(2014年製作の映画)

4.0

福祉の限界が見えてしまった以上未来は決して明るくはない。この家族が現在どんな決断を迫られているのか、知りたいけど知りたくない自分がいる

今夜はトーク・ハード(1990年製作の映画)

3.6

確かに『タイムズ・スクエア』の焼き直しみたいな感じで既視感強め。少女2人とDJの同化みたいな。ここでの若者が示す反骨精神は思考停止した日本人にこそ響くのではないだろうか

その手に触れるまで(2019年製作の映画)

3.8

あの瞬間脳裏によぎったのは導師ではなく母親であり、憎悪の対象であった教師に手を差し伸べられ、少年は命の尊さを知る。
どんなに過激な思想に傾倒しようとも、どこまでも温かく見守ってみせる周囲の視線は紛れも
>>続きを読む

タイムズ・スクエア(1980年製作の映画)

4.0

はみ出し者が居て、サポートする大人が居て、同調する観衆が居る。
ラストのシチュエーションだけでも観た甲斐あり。テレビ同様の落下というアクションがいい。しかし決して壊れはしない。皆が下で支えてくれるから
>>続きを読む

凪の海(2019年製作の映画)

4.0

兄の死の背景が朧げながら微かにその輪郭を現すとき、露になり始める実像と虚像の温度差。たとえ知っていてもあえて言語化しないという僻地集落の閉鎖性が、立ち込める死の不穏さと共鳴し合って私の心はいとも簡単に>>続きを読む

父から息子へ ~戦火の国より~(2017年製作の映画)

4.0

親父さんへの予期せぬアクシデントによりカメラを向け続ける事に限界が生じてしまい、否応無しに被写体の中心が子供らへとスライドするわけだが、結果として、皮肉な事に作品の硬質さは増していく。
誰もが視認でき
>>続きを読む

ジョゼとピラール(2010年製作の映画)

4.0

『白の闇』『複製された男』などで知られるノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの最晩年に迫ったもの。
とにかく直情タイプの妻ピラールが強すぎるんだけど、それをウィットの効いた対応でいなしていくジョゼ
>>続きを読む

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.2

この換骨奪胎っぷりは天晴れ。半月先もニコニコしていられそう。
観客「全てが丸く収まって面白味に欠ける」→G・ガーウィグ「でなきゃ大衆ウケしないって出版社のおっちゃんも言ってただろぶっ飛ばすぞ」っていう
>>続きを読む

SKIN 短編(2018年製作の映画)

4.0

啓発的役割の大きさ。
極めて暴力的な愚行を目撃する事で違った側面から声が届きはじめる

ビッレ(2018年製作の映画)

4.4

空中分解しそうでしない、ギリギリのところで踏みとどまる家族の危うさと温かみの共存に悶絶。
鬱々とした環境下であるにも拘わらず、才能を埋没させることなく開花させていく少女の力強さが、映像強度と共振し躍動
>>続きを読む