蛸さんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

ウインド・リバー(2017年製作の映画)

4.3

雪に覆われた大地とそこに佇む人間という映像の持つシンプルな力強さ。象徴的な映像と同じく無駄を削ぎ落とした非常にミニマムな脚本。
アメリカの原罪を巡る現代の神話=西部劇。

アントマン&ワスプ(2018年製作の映画)

4.0

前作とは違い、善と悪の明確な二項対立の存在しない脚本。マクガフィン(=30年前に量子世界に消えたジャネット・ヴァン・ダイン、もしくはピム博士のラボ)を巡って複数の勢力が入り乱れる展開が繰り広げられます>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

4.1

映画を見始めたばかりの中学生の頃に見て、随分と混乱した記憶がある作品。
とはいえメインの筋自体はアメリカのB級犯罪映画にありがちなシンプルなもの。けれど、映画としてやってはいけないことをたくさんやって
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激突!(1971年製作の映画)

4.0

ただひたすらにトラックに追われ続けるというワンシチュエーション、89分の中で映画的技巧を凝らしまくった作品。
車窓やサイドミラー、バックミラーなどのスクリーン内スクリーンの使い方の巧みさ。
一方的に追
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逃走迷路(1942年製作の映画)

4.2

オープニングからスタイリッシュでかっこいい、濡れ衣を着せられた主人公の逃亡劇。
ガソリンの入った消化器という逆説をキッカケにして主人公は、非日常へと突入していきます。そこは何も信用することができない、
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夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)

4.3

まるで自意識という「壁」が存在しないかのような人々たちのあいだに、有機的なつながりが生じては消えて行く。ここでは、出会ったばかりの人々がまるで10年来の友であるかのように接し合う。人々は自分の感情を曝>>続きを読む

アラバマ物語(1962年製作の映画)

4.3

画面に映し出される、子供のおもちゃ箱。その中にカメラが入っていき、中の物は次第にそのディティールを露わにする。時計の音が記憶を過去へ誘い、この映画が子供の目線で語られることが宣言される。
とても美しい
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カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

4.3

実写映画というメディアの本質の一つに「偶然性」という要素が存在します。
実写映画においては、どれだけ優れた映画監督であろうと、画面の中のものを100%コントロールすることはできません。
実際に初期映画
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インクレディブル・ファミリー(2018年製作の映画)

4.1

今回の敵役(スクリーンスレイヴァー)は「人々はスクリーンの向こう側のヒーローに魅了されて自分の人生を生きていない」と述べそのアンチヒーロー思想を展開します。
スクリーンスレイヴァーにとってヒーローの存
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メリー・ポピンズ(1964年製作の映画)

4.4

不和を抱えたバンクス一家が外の世界からやって来たメリー・ポピンズを受け入れる過程を通じて再生していく、というこれ以上ないほど分かりやすく原型的なストーリー。
メリー・ポピンズはバンクス一家に取っての「
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ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.2

静止画の連なりで構成されていることによって、全てが過去に起きたことであるという印象が与えられる。そのような中でヒロインの瞬きが、時間を超えて存在し続けているかのような鮮烈な輝きを放つ。

タイムトラベ
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ロケッティア(1991年製作の映画)

4.0

終始ノスタルジックでクラシカルな語り口で紡がれる物語は衒いがなく、無邪気。
1930年代のハリウッドが舞台のハリウッド映画ということもあって、非常に自己言及的。
通奏低音としてのハワード・ヒューズの存
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ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

4.4

恋愛関係にある二人(アルマとレイノルズ)が生活を共にして行く上で生じるパワーバランスの問題を描いた作品。
この映画で描かれているのは誇張された関係性ではあるが、同じようなことは多かれ少なかれ現実のカッ
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ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018年製作の映画)

4.0

ハンソロといえばスターウォーズの中でも西部劇的なキャラクターです。彼が主人公となる本作がまさしく「銀河を股にかけた西部劇」とでも言うべきものになっているのも当然ですね。西部劇的要素としては列車強盗や決>>続きを読む

ニンジャバットマン(2018年製作の映画)

4.0

画面の中で動き回っているのは『バットマンのキャラクターたちなのに、ノリは日本のアニメでしかない。ということで最初は違和感が凄かったが、慣れてくるとこれはこれで面白い。
キャラクターの扱いに関しては文句
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スーパーマン(1978年製作の映画)

4.6

元祖スーパーヒーローであるスーパーマン。78年当時からして既に世界的なアイコンであった彼の物語を、真正面から正々堂々と描き切る凄まじく誠実な映画です。

コミックの世界が現実に飛び出してくるオープニン
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キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー(2011年製作の映画)

4.1

あまりにも時代遅れな、「愛国ヒーロー」というコンセプトを持ったキャプテン・アメリカというキャラクター。彼を今の時代に合わせて描くとすればどのようにすれば良いのだろうか?
上記の問いは、ある種メタフィク
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デッドプール2(2018年製作の映画)

4.1

行き当たりばったりすぎる脚本によって、この映画はコミックに接近する。
少人数によって制作される表現だけが持ちうる特徴を獲得しているという意味で、まさしく「アメコミ映画」。
一作目が小奇麗にまとまってい
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市民ケーン(1941年製作の映画)

4.6

冒頭のニュース映画演出はもちろん、「新聞記者の語り部がケーンの知り合いを訪ねて行き彼の人物像を立体的にしていく」という話の流れにしても擬似ドキュメンタリー的です。
有名なラジオ版『宇宙戦争』事件や、彼
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アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年製作の映画)

4.4

MCUを巨大なドラマシリーズとして見た場合、1つのクライマックスの前半に当たる作品。当然のことながらシリーズに対するリテラシーのないものが楽しめる映画ではない。しかしこれまでのシリーズを見てきたものに>>続きを読む

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)

4.3

この映画は集合住宅における人々の生活を映し出した長回しのシークエンスから始まる。こう書くとまるで『裏窓』のオープニングのような出だしだ。
大きな違いは『裏窓』のオープニングが「映画というメディアの特性
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パシフィック・リム アップライジング(2018年製作の映画)

4.0

一作目に対する愛のなさが炸裂している雑な脚本だがそれはそれでよかったりする。
前作にあった特撮要素が減ってロボットアニメとしての色が強くなってきた。おどろおどろしくもあるデルトロ監督のこだわりは消え失
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スリー・ビルボード(2017年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

「ハイウェイの脇に立ち並ぶ巨大な広告看板」という非常にアメリカの原風景的なモチーフ。そしてそれが田舎町に混乱を引き起こし、血と暴力に塗れた怒りの応酬が繰り返される。基本的にお話は、レイプ殺人された娘の>>続きを読む

アトミック・ブロンド(2017年製作の映画)

4.3

劇中、カメラを画面に対して平行に180度回転させた映像がしばしば挿入される。これによって生じる天地の逆転が、映画全体を象徴しているかのように思えた。陰謀渦巻く、分離壁崩壊前夜のベルリン。誰が敵で誰が味>>続きを読む

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

4.3

デル・トロが描くファンタジーは一見すると現実離れしたものに思えますが、決して現実逃避的なものではありません。現実逃避的なファンタジーが現実における「都合の悪いもの」を排除した上で成り立っているのに対し>>続きを読む

ブラックパンサー(2018年製作の映画)

4.3

主人公の王としての通過儀礼と成長をここまでストレートに描いて、きちんと面白くなっているのがすごい。
衣装から音楽まで多岐にわたってなされるアフロアメリカン文化への参照はたんなる目配せでは終わってないし
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デトロイト(2017年製作の映画)

4.1

差別の対象となりうる具体的な個人を見ていないレイシストの粗雑な思考は仮想敵を作り出す。その意味であらゆる差別は「虚構」によって成立していると言えるだろう。
この映画においても「存在しない狙撃手」という
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バーフバリ 王の凱旋(2017年製作の映画)

4.5

アクションの連関をいかにスムーズに描くのかに注力した結果、ドラマがアクションの中に巧みに織り込まれて映画から停滞感が消失するということの好例。 映画とはアクションの連なりである、という基本に帰ったとい>>続きを読む

スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

前作のラストシーンの直後から始まる本作。レイから手渡されたライトセーバーを投げ捨てるルーク、という「外し」によるつかみ。振り返るとこの「外し」が映画全体を支配していたように思う。最初から最後まで徹底的>>続きを読む

ワイルド・スピード ICE BREAK(2017年製作の映画)

4.2

冒頭の誇張されたキューバ感に溢れたレースシーンから素晴らしい。
終始画面の中で面白いことしか起きないので退屈しない。
マッチョさの塊のような脚本とチーム感、そして打ち上げエンディグ。
シリーズ初見だけ
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ジャスティス・リーグ(2017年製作の映画)

4.0

一応、チームものの物語として「(一人では達成不可能な)目標の提示、チームのキャラクターの紹介、チームの結成、目標の達成」のプロセスは描かれています。
『アヴェンジャーズ』と違って、チームのメンバーのう
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レゴバットマン ザ・ムービー(2017年製作の映画)

4.2

冒頭のロゴいじりからスタッフロールまで怒涛の勢い。なんだけど、緩急のつけ方も抜群。
犯罪都市ゴッサムでのフリークスたちのどんちゃん騒ぎ、という点でコミックの方ととやってることは同じなのかもしれない。
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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017年製作の映画)

4.2

タイトルが出るまでの流れが秀逸。窓(=スクリーン)の水滴によって書かれたスマイルマークは雨に打たれて消えていくけど、のちに出てくるペニーワイズを象徴しているかのよう(地下室で光る2つの目も)。少年は兄>>続きを読む