蛸さんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

22年目の告白 私が殺人犯です(2017年製作の映画)

4.2

この映画のことを知った時に、やはり酒鬼薔薇聖斗と彼の書いた『絶歌』を巡る騒動のことを思い出しました。
最も、映画の中で犯人として名乗りを上げている曽根崎雅人(藤原竜也)は現実の元少年Aよりはるかに挑発
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来るべき世界(1936年製作の映画)

3.8

まず、「反戦」というテーマが先行しすぎていて、説明的な演出が多いところはこの映画の欠点だと思います(その意味で啓蒙映画的な匂いが強いです)。
舞台設定が抽象的なことがこの映画の寓意性を高めていると思い
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パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊(2017年製作の映画)

3.0

終始緊張感が無いので流石にダレる。コメディ色が強いけど、敵と味方の追いかけっこも、誰もが本気を出していないように見えて…馴れ合いのような展開が続くのが流石につらかった……(それこそキートンとかチャップ>>続きを読む

フレンチ・コネクション(1971年製作の映画)

4.2

フランスーアメリカ間の麻薬密売ルート=「フレンチコネクション」を追う刑事のお話、と言うとありふれた犯罪映画のようですが、ニューシネマ期の映画とあって(それにフリードキン監督作とあって)かなり挑戦的な作>>続きを読む

メッセージ(2016年製作の映画)

4.2

所謂ファーストコンタクトもの。凡百のファーストコンタクトものとの違いとして、「宇宙人とのコミュニケーションを成立させようと努力する人間たち」にドラマの焦点があてられているところが面白いです(大抵はいき>>続きを読む

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)

4.3

1人の俳優が何年にも渡って一つのキャラクターを演じることで、その時間の経過がキャラクターにある種の深みを与えることがあります。これは実写映画という「虚構と現実が交錯するメディア」のマジックの一つだと思>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

相変わらずフレッシュな感性、アイデアに満ち満ちた作品。オープニングタイトルからエンドロールまでどこを切り取ってもかっこいいです。「外し」の演出が心地よいのも相変わらず。
前作も良かったですが今作の方が
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BLAME!(ブラム)(2017年製作の映画)

4.0

「今の弐瓶勉が『BLAME!』を作り直したらどうなるのか」ということに尽きると思います。
この映画は原作の一部を再構成し、電気漁師(第3者)視点で描きなおしたものです。基本的には原作の要素を使って組み
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キングコング:髑髏島の巨神(2017年製作の映画)

4.4

王道娯楽アトラクション映画としての「獣性」と、秘境映画の歴史を踏まえたクレバーな演出、洗練された画作りなどを通して垣間見える「知性」が両立した正しくキングコングそのものを体現したかのような傑作。
『地
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モアナと伝説の海(2016年製作の映画)

4.1

オープニングから、伝統と因習を断ち切ってモアナが海に飛び出るまでのシークエンスがテンポも良く本当に素晴らしかったです。
ヨットが海を軽快に渡っていく爽快感は終始とてつもなく、『マッドマックス』の影響も
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ダンボ(1941年製作の映画)

4.0

耳が大きな奇形のゾウ=ダンボが、ハンデだと思われていたその身体的特徴を逆手にとって成功するというストーリーは、制作から70年以上が過ぎた今でも「正しい」ものです。
ダンボは、序盤ではその大き過ぎる耳に
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ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)

4.3

音楽と踊りが非日常を引き寄せ、人々をハイウェイでの渋滞という拘束状態から解放するオープニングシークエンスは、これ以上ないほどに開放感、幸福感に満ち溢れています。人々は車内というプライベートな空間から共>>続きを読む

雨に唄えば(1952年製作の映画)

4.2

『雨に唄えば』と言えば有名なのは雨中のダンスシーンです(今となっては僕のように、『時計仕掛けのオレンジ』のブラックなパロディの方を想起される方も多いでしょうが)。
あの場面では、劇映画において雨が通常
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ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)

4.1

見る前は、会計士としてのオモテの顔を持った殺し屋の主人公が悪党を殺しまくる映画なのかなあと。スカッとするタイプの映画なのかと思っていました。実際に見て見ると思っていたよりも数段複雑なストーリーテリング>>続きを読む

抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956年製作の映画)

4.3

脱獄映画の主人公はシステムと闘う反逆者でなければなりません。彼は「現状を受け入れる」か「状況自体を変える」という二者択一を迫られたとき、迷わず後者を選び採るタイプの人間なのです。だからこそ彼らはとてつ>>続きを読む

ドクター・ストレンジ(2016年製作の映画)

4.1

MCU発のドラッグムービー。
これはロジャー・コーマン制作の、LSDによるトリップを再現した映画『白昼の幻想』と同じタイプの映画だと言えるのではないでしょうか。つまり、通常の状態では知覚できないはずの
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マグニフィセント・セブン(2016年製作の映画)

4.1

「悪党が現れる」「七人のガンマンが集結する」「戦う」という極めてシンプルなプロットがまずもって潔い(『七人の侍』にあったような枝葉の要素はばっさりカットされています)。
オープニングで敵役のバーソロ
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恐怖の報酬(1953年製作の映画)

4.4

油田で起きた大火事を吹き飛ばすためのニトログリセリンをトラックで運ぶ、500kmの地獄行脚。
いつ爆発するとも知れないニトログリセリンが映画の大半に緊張感を漂わせているという点で余りにも純粋なサスペン
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SF/ボディ・スナッチャー(1978年製作の映画)

4.3

『ボディスナッチャー 恐怖の街』のリメイク第1作目。
基本的にはオリジナルの56年版を踏襲した内容になっているのですが、「やつら」の描き方や特殊メイク技術の向上によって(予算の向上によってかもしれませ
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ヤング・フランケンシュタイン(1974年製作の映画)

4.3

かの有名なフランケンシュタイン博士の孫が主人公のコメディ映画。遺産相続のために、トランシルバニアにある古城に向かった主人公が、地下室で祖父の実験室を見つけ出し天啓に打たれたことで、自分でも怪物を作り出>>続きを読む

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016年製作の映画)

4.1

1926年のニューヨークが舞台とあってモロにRoaring Twentiesなルックのアール・デコ調の建築(摩天楼)、ポスターやファッションなどが一々楽しいです(アメリカ合衆国魔法議会の職員のギャング>>続きを読む

ブレックファスト・クラブ(1985年製作の映画)

4.0

補習授業のため土曜日の学校に集められた「体育会系、不良、お嬢様、変人、ガリ勉」たちの1日。
バックボーンもキャラクターも違う、普段は一同に会すことのないはずの人物たちが集まってお互いを理解し影響を与え
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ボディ・スナッチャー/恐怖の街(1956年製作の映画)

4.5

親しい街の住民たちが知らないうちに「何か」に取って替わられていくというアイデアは、モロにアカ狩りによる疑心暗鬼の時代背景を反映したもののようです。
このようなシチュエーションは、結局のところ他人の考え
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回転(1961年製作の映画)

4.1

小中千昭の『恐怖の作法』の中でファンダメンタルホラーの例として挙げられてもいる本作ですが、なるほどと言うべきか、後のJホラーにつながるような見せ方が散見されるように思えました。

広大な屋敷に数人の使
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ネオン・デーモン(2016年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

田舎からLAにやってきた主人公がファッション業界において大成していくという物語展開は『ショーガール』的な女性のサクセスストーリーのようですが、その実態は、虚飾に塗れたファッション業界における、美のイデ>>続きを読む

仄暗い水の底から(2001年製作の映画)

4.3

シングルマザーの主人公とその娘が引っ越してきた新しいマンションが…という大筋はベタなものではあるのですが、魅せ方の巧みさや、雰囲気づくり、恐怖パートと日常ドラマのパートが密接に関わり合っている脚本の完>>続きを読む

サスペリア(1977年製作の映画)

4.3

名門バレエ学校への入学のためにドイツへやってきた主人公が空港を出た瞬間から鳴り響くゴブリンのサウンドは、神秘的でありながらキッチュな雰囲気をも併せ持ち、映画全体を象徴しているかのようです。
ご丁寧にも
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サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ(2012年製作の映画)

4.1

新しい技術が導入された時の抵抗と戸惑いは、あらゆる業界において共通していますが映画業界もその例外ではありません。21世紀に入って急速に進展したフィルムからデジタルへの移行は、必然的にフィルム派とデジタ>>続きを読む

白いドレスの女(1981年製作の映画)

4.3

ローレンス・カスダンの初監督作ということで流石にストーリーの展開は巧みと言う外ありません。さらに意外にも、と言うとなんですが映像面での完成度も相当のものです。
冒頭の闇夜に浮かび上がる火災の巨大な炎か
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タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら(2010年製作の映画)

4.2

『悪魔のいけにえ』のパロディであるホラーコメディ映画でありながら、上記の作品を始めとする南部ゴシックものが作り上げてしまった田舎へのネガティヴなイメージを逆手に取った脚本が素晴らしいです。
主人公のタ
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フランケンシュタインの花嫁(1935年製作の映画)

4.2

『フランケンシュタイン』の原作者メアリー・シェリーとその夫とバイロン卿が古城にて前作の続編の話をするという場面から映画は始まります。
しかし、前作の『フランケンシュタイン』が原作の一部をベースにして映
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見えない恐怖(1971年製作の映画)

4.1

盲目の主人公を演じるミア・ファローがひたすら酷い目に遭い続けるという点で『ローズマリーの赤ちゃん』と同じタイプの映画だと思いました。(ヒッチコック的な、美人を酷い目に遭わせて喜ぶサディスティックな映画>>続きを読む

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016年製作の映画)

4.3

スピンオフというものは、その性質上、ともすればファンサービスに特化した二次創作めいたものになってしまいがちです。新しい三部作への布石として、これまでのスターウォーズを踏襲しつつ新しい(魅力的な)諸要素>>続きを読む

反撥(1964年製作の映画)

4.4

映画の大筋は男性恐怖症の主人公が男性の欲望を伴った視線=まなざしに晒されることで狂気に侵されていく、というものです。
自身が「見られる対象」として欲望に晒されていることに対する嫌悪感が彼女を狂わせてい
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オーソン・ウェルズのフォルスタッフ(1966年製作の映画)

4.6

大飯食らいの大ホラ吹き、偉大なる俗物フォルスタッフがその巨体を振り回し所狭しと画面の中を駆け回る前半の祝祭的な雰囲気と、かつての友である皇太子との別離を描いた後半の無常感はどこまでも対照的です。
かつ
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北国の帝王(1973年製作の映画)

4.0

なんとしても列車にタダ乗りしようとする伝説のホーボー「A no.1」と、タダ乗りした人間を見つけたらハンマーで殴り殺してしまう19号車の車掌シャックの闘い。

汽車の空撮に牧歌的な音楽が流れるオープニ
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