アニマル泉さんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

アニマル泉

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失われた週末(1945年製作の映画)

4.5

ワイルダーのオスカー受賞作。制作はチャールズ・ブラケット、脚本はワイルダーとブラケットの共同脚本。パラマウント 白黒スタンダード。
ワイルダーらしくストーリー展開が巧みだ。アル中ドン(レイ・ミランド)
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死体を売る男(1945年製作の映画)

4.5

制作ヴァル・リュートン、監督ロバート・ワイズ、主役ボリス・カーロフのRKOホラー、白黒スタンダード。
ワイズの演出が素晴らしい。カッチリした構図で階段を巧みに配している。墓の犬と老婆、盲目の歌う少女(
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果しなき欲望(1958年製作の映画)

4.5

今村昌平の重要な主題は「穴」だ。本作はまさに「穴」を掘る映画である。時価6000万のモルヒネを発掘する欲望と狂気を描いた重喜劇。ギラギラした欲望と愚かさと地下といえばポン・ジュノだ。今平の血はポン・ジ>>続きを読む

けものの眠り(1960年製作の映画)

4.2

鈴木清順の社会派サスペンス。企画・水の江滝子、原作は菊村到の週刊読売連載小説、助監督は武田一成。白黒 日活スコープ。
「誰もが持っているけものが眠りから覚める」香港から帰国して失踪した会社重役・芦田伸
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私はゾンビと歩いた!(1943年製作の映画)

4.5

RKOの大ヒット作「キャット・ピープル」の制作ヴァル・ニュートン、監督ジャック・ターナーが再び組んだ怪奇映画。白黒スタンダード。
ノワール調の光と影が素晴らしい。カリブ海に向かう夜の海、船や人物のシル
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悪魔の人形(1936年製作の映画)

4.5

グリフィスの弟子であるトッド・ブラウニングの確かな手腕が冴える怪奇映画。脚本はエリッヒ・フォン・シュトロハイム。MGM 白黒。冒頭から銃とサーチライト、犬に追われてポール・ラヴォンド(ライオネル・バリ>>続きを読む

狂恋/狂恋・魔人ゴーゴル博士(1935年製作の映画)

4.5

ドイツの名カメラマンのカール・フロイントが監督した最後の怪奇映画。本作の撮影にはグレッグ・トーランドを起用した。原作はモーリス・ルナールの「オルラックの手」ピーター・ローレのハリウッド・デビュー作にな>>続きを読む

怒りの日(1943年製作の映画)

5.0

ドライヤーの一貫した主題は「魔女」である。「魔女」の範囲はジャンヌ・ダルクの火刑、吸血鬼、そして本作は不倫までと幅広い。「怒りの日」とはキリスト教の最後の審判が下る日。キリスト教の教えでは、人を裁くの>>続きを読む

らせん階段(1946年製作の映画)

4.0

ロバート・シオドマクのフィルム・ノワール。制作はドア・シャリー、RKO 配給、白黒スタンダード。障害者や弱者ばかりを襲う連続絞殺魔に狙われたヒロインの恐怖の一夜を描く。ヒロインのヘレン(ドロシー・マク>>続きを読む

暗黒の恐怖(1950年製作の映画)

4.2

ペスト感染を48時間以内に阻止するエリア・カザンのクライム・サスペンス。コロナ禍の今見ると旬な作品だ。
冒頭の雨上がりの夜の道、引き込み線での逃走劇、ギリギリで列車とすれ違う、ホームのトタンの壁に切り
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優しき殺人者(1952年製作の映画)

4.5

ロバート・ライアンがアイダ・ルピノを監禁する密室劇。冒頭以外はほぼワンセットで人物も二人の濃密なフィルム・ノワールだ。原作はメル・ディネリのブロードウェイ舞台劇で自ら脚本を書いた。制作はルピノのプロダ>>続きを読む

M(1951年製作の映画)

4.2

ラングの「M」をジョセフ・ロージーがリメイクした。撮影は「キッスで殺せ」のアーネスト・ラズロ。助監督がロバート・アルドリッチ。白黒スタンダード、コロンビア映画。
冒頭はカットレベルまで忠実に再現されて
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M(1931年製作の映画)

5.0

ラングのトーキー第1作。脚本はラングと当時の妻テア・フォン・ハルボウ。ラングの主題は「円」だが本作は冒頭から円が氾濫して眩暈がする。トップカットは俯瞰で子供たちの円陣で連続誘拐の不気味な歌が歌われる。>>続きを読む

ジュデックス(1963年製作の映画)

4.1

サイレント連続活劇「ジュデックス」のリメイク。監督はジュルジュ・フランジュ。ラストクレジットで本作はオリジナルを監督したルイ・フイヤードに捧げられている。冒頭はアイリスインから始まる。連続活劇風にシー>>続きを読む

スペードの女王(1949年製作の映画)

4.1

アレクサンドル・プーシキンの名高い短編小説の映画化、監督はソロルド・ディキンソン。イギリス映画。白黒スタンダード。カードで必ず勝つ方法に取り憑かれたヘルマン(アントン・ウォルブルック)の破滅の物語。題>>続きを読む

ハウス・バイ・ザ・リバー(1950年製作の映画)

5.0

ラングの「布」の映画だ。家政婦エミリー(ドロシー・パトリック)の死体を入れた布袋が浮いてくる、流れていく悪夢。妻マージョリー(ジェーン・ワイアット)がいない隙にスティーブン(ルイス・ヘイワード)が書斎>>続きを読む

魔人ドラキュラ(1931年製作の映画)

4.0

トッド・ブラウニング監督のユニヴァーサル怪奇映画。ブラウニングはカッチリした演出だ。冒頭の揺れる馬車、「今夜はワルプルギスの夜だから気をつけろ」という会話、宿に着くがレンフィールド(ドワイト・フライ)>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

4.5

ドライヤーのヴァンパイア映画。トップカットから水バックで歩いて来るアラン(ニコラ・ド・ガンズピエール男爵 芸名ジュリアン・ウェスト)、天使のシルエットの看板、屋内からの窓ごしに覗くアランのフレームショ>>続きを読む

黒猫(1934年製作の映画)

4.0

エドガー・G・ウルマー監督のユニヴァーサル怪奇映画。ベラ・ルゴシとボリス・カーロフの初共演作である。原作はエドガー・アラン・ポー。デビッド・マナーズとジャクリーン・ウェルズは新婚旅行、列車の個室にダブ>>続きを読む

アンダルシアの犬(1928年製作の映画)

5.0

ブニュエルとダリが奔放なイメージを映像化したシュールレアリズムを代表する実験映画。冒頭はブニュエル自身が剃刀を研いでいる。そして満月を切り込みように雲がかかる。直結して女の眼球が剃刀で切られる。あまり>>続きを読む

カリガリ博士(1920年製作の映画)

4.5

ドイツ表現主義を代表するサイレント映画。全編をセットで作り込んでいる。斜めの家、シュールな街頭など奇妙な空間が全編を貫いている。扉や幕が頻出する。階段や坂道などの縦構図が多用される。殺人場面で恐怖で引>>続きを読む

涙を、獅子のたて髪に(1962年製作の映画)

4.2

篠田正浩の松竹時代のリリカルな作品。加賀まりこのデビュー作。脚本・寺山修司、音楽・武満徹。白黒シネスコ。港湾労働者を仕切るヤクザと組合を作ろうとする労働者たちの抗争に巻き込まれる若者たちの悲劇と絶望を>>続きを読む

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

4.5

ケリー・ライカートの西部劇。冒頭の川渡りが素晴らしい。ライカートは「水」の作家だ。豊かな川の流れに逆らってゆったりと進む馬車のロングショットが美しい。しかしこのあと本作では豊かな水は描かれない。西部に>>続きを読む

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.2

ケリー・ライカートの処女作。ライカートの真骨頂は「停滞するロードムービー」とでも呼べる世界で、新たな旅立ちで終わる作品が多い。処女作から鮮やかにこの構造が示されている。前半はコージー(リサ・ボウマン)>>続きを読む

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.3

ケリー・ライカートの第2作。旧友との一泊の温泉旅行を描く。ライカートは「水」の作家だ。本作ではクライマックスの露天風呂だ。森、焚火、野宿はライカートの世界。ライカートの映画で普通に部屋で寝る場面はない>>続きを読む

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

4.2

ジャームッシュが描く一匹狼の殺し屋の映画。鈴木清順の「殺しの烙印」が強く意識されている。「殺しの烙印」で宍戸錠のライフルに蝶が止まって狙撃を失敗したように、殺し屋ゴースト・ドッグ(フォレスト・ウィテカ>>続きを読む

ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年製作の映画)

5.0

「ストレンジャー・ザン・パラダイス以前」と「以降」に映画史が別れるとまで言われたジャームッシュの出世作。ヴェンダースから「ことの次第」の余ったフィルムをもらって第1部を撮り、ストローブ=ユイレからもら>>続きを読む

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013年製作の映画)

4.2

ジャームッシュのジャンル映画、本作は吸血鬼である。ジャームッシュは「夜」の作家だが本作は真骨頂だ。主役が吸血鬼なので夜しか活動できないからだ。本作では「円」が氾濫する。冒頭からカメラが俯瞰で回転しなが>>続きを読む

ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

4.3

ジャームッシュのオムニバス、一晩の5つの都市のタクシーの物語を描く。
①ロサンゼルス
ヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)はキャスティンク・ディレクター、最初は煙たがっていた女の子ドライバーのコーキー(
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デッドマン(1995年製作の映画)

4.2

ジャームッシュの西部劇、自身のフィルモグラフィーの中で最大規模の大作である。お尋ね者になったジョニー・デップの逃走劇だ。しかし荒野を馬で疾走する訳ではない。森の中や川下りなのがジャームッシュらしい。前>>続きを読む

コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)

4.5

ジャームッシュの短編集。「ダウン・バイ・ロー」のあとに第1話を撮り始めてから17年ごしに完成させた。全11話。白黒ビスタ。
①「変な出会い」ロベルト・ベニーニとスティーヴン・ライト2人の会話劇。名前を
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ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)

4.5

ジュームッシュは「3」だ。3人になると安定する。本作はザック(トム・ウェイツ)とジャック(ジョン・ルーリー)の物語だ。この2人は同時に目が開いて、同時に罠に嵌められて、同じ監獄に入れられる。2人は危険>>続きを読む

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

4.2

ジャームッシュのゾンビ映画。文字通り「人を食った」映画だ。田舎町に起きる動物の異常行動。なかなか日が暮れないのもおかしい。テレビでは専門家が地球の回転軸がズレていると言う。警察所長(ビル・マーレイ)ロ>>続きを読む

パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

4.5

ジム・ジャームッシュの処女作でニューヨーク大学卒業作品である。16㎜カラー。
「ジャック・リヴェットが撮るパリのようにNYを撮りたい」と語っている。冒頭から群衆の雑踏のスローモーションに街の様々な音が
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ギミー・デンジャー(2016年製作の映画)

4.0

伝説のバンド、イギー・ポップ&ザ・ストゥージズを描いたジャームッシュのドキュメンタリー。イギー、メンバー、関係者のインタビューでバンドの歩みを振り返る。様々なフッテージ、写真、アニメーション、イメージ>>続きを読む

台北ストーリー(1985年製作の映画)

4.2

楊徳昌(エドワード・ヤン)の長編第2作。ヤンの作品には何か殺気が漂っている。例えばアリョン(候孝賢)が突然、店で暴発して殴り出す場面、この場面はその直前の便所の場面が決定的だと思う。ヤンの作品では便所>>続きを読む