アニマル泉

涙を、獅子のたて髪にのアニマル泉のレビュー・感想・評価

涙を、獅子のたて髪に(1962年製作の映画)
4.2
篠田正浩の松竹時代のリリカルな作品。加賀まりこのデビュー作。脚本・寺山修司、音楽・武満徹。白黒シネスコ。港湾労働者を仕切るヤクザと組合を作ろうとする労働者たちの抗争に巻き込まれる若者たちの悲劇と絶望を描く。
加賀まりこや藤木孝を長玉レンズのアップフォローで躍動的に捉える。ロングの移動ワンカットで木場の殺人場面を描く、殺す瞬間はオフで描くのが凄い。走る加賀と藤木のショットがいい。父親を殺した犯人を知った加賀が木場を走り込んでくる俯瞰ショットが素晴らしい。藤木と加賀の夜の動物園のデートが印象的だ。ライオンを見て藤木が吠える。若者の叫び。
ただし物語の構造はやや図式的だ。階級差が強調される。経営者たちの階級はヨットやパーティー、かたや港湾労働者は搾取されて組合づくりを密談する。加賀まりこはデビュー作ながら堂々たる存在感だ。藤木孝は当時ロカビリーのアイドル歌手だ。藤木が南原宏治に促されてパーティーで歌う場面、ロングのワンカットで描く。武満徹の音楽は抒情的なメロディーだ。しかし藤木と加賀は瑞々しいけどメロドラマになってない。無軌道ぶりが切なくないのが難点だ。性的不全の山村聰、奔放な岸田今日子 若き神山繁 南原宏治、個性的なキャラクターが揃う。出会いの場面で藤木が犬を投げつけたのに驚いた。海に死体が浮かぶ映画だ。
アニマル泉

アニマル泉