アニマル泉さんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

アニマル泉

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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.2

予測がつかない動物的でしなやかでパワフルな役所広司が絶品だ。対して西川美和の演出はひたすら説明的なのが残念だ。西川は省略が下手で決定的なショットがない。役所広司が倒れるのを見せずにカーテンが窓から大き>>続きを読む

逃げた女(2019年製作の映画)

4.3

旧友たちとの再会を通じて日常の幸福と不安を描くホン・サンスの新作。ロメールを彷彿とさせる会話劇をワンシーンワンカットで描く。パラ2ショットが多く特異なズームが多用される。ガミ(キム・ミニ)が三人の旧友>>続きを読む

田舎司祭の日記 4Kデジタル・リマスター版(1951年製作の映画)

4.5

ブレッソンは「手」だ。若い司祭(クロード・レデュ)が十字を切る手、領主の娘シャンタル(ニコル・ラドラミル)の懐から手紙を差し出す手と受け取る司祭の手、司祭が按手して頭にかざす手、床に落ちた日記とペンを>>続きを読む

田舎司祭の日記(1950年製作の映画)

4.5

ブレッソンは「手」だ。若い司祭(クロード・レデュ)が十字を切る手、領主の娘シャンタル(ニコル・ラドラミル)の懐から手紙を差し出す手と受け取る司祭の手、司祭が按手して頭にかざす手、床に落ちた日記とペンを>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

4.0

認知症を描いて絶賛された舞台作を演出家フロリアン・ゼレール自らが初監督した。「時間」の映画である。「映画は時間の芸術である」と見抜いたのはコッポラだ。本作もアンソニー・ホプキンスの妄想で時間が反復して>>続きを読む

シュザンヌの生き方(1963年製作の映画)

4.2

ロメールの「六つの教訓話」第二作。
ベルトラン(フィリップ・ブゼン)ギョーム(クリスチャン・シャリエール)シュザンヌ(カトリーヌ・セー)ソフィ(ダイアン・ウィルキンソン)男女4人の物語。ロメールはパリ
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モンソーのパン屋の女の子(1963年製作の映画)

4.5

ロメールの「六つの教訓話」第一作。パリの街頭ロケが素晴らしい。モンソー地区の市場や路地など生活感が溢れている。主人公の僕はバルべ・シュレデール、モノローグはベルトラン・タヴェルニエ。
僕は一目惚れした
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ベレニス(1954年製作の映画)

4.0

エドガー・アラン・ポー原作のロメールの短編第四作。撮影がジャック・リヴェット。ロメール自らが主演。珍しく全編音楽とモノローグだ。音楽を排した実音重視のロメールの作風ではレアである。
偏執狂とてんかんが
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愛の昼下がり(1972年製作の映画)

4.5

男が女をまわりくどく誘惑しようとする、あるいは女にたぶらかされる様を描くロメールの「六つの教訓話」シリーズ第六作。
「扉」と「階段」の映画だ。「扉」を開け閉めして人が出入りするリズムが素晴らしい。本作
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モンフォーコンの農婦(1968年製作の映画)

4.0

外務省の依頼で制作されたロメールの短編。撮影はアルメンドロス。モンフォーコンの若い農婦モニク・サンドロンの日々の生活を四季を通して描く。カラー 14分。
端正な作品だ。乳搾り、牛の世話。夫とリンゴの実
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ヴェロニクと怠慢な生徒(1958年製作の映画)

4.0

家庭教師ヴェロニクと少年の噛み合わない授業を描くロメールの短編。AJYMフィルム制作。シャブロルのアパートで撮影された。室内劇である。分数の割り算。ヴェロニク(ニコール・ベルジュ)が机の下で靴を脱ぐの>>続きを読む

紹介、またはシャルロットとステーキ(1961年製作の映画)

4.5

ロメールの短編第二作。ロメールが「六つの教訓話シリーズの萌芽」と呼ぶ作品で二人の女性の間でどっちつかずの男が描かれる。
主役がゴダール。サングラスがないとハンサムだし芝居が上手いので驚く。
真冬のスイ
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獅子座(1959年製作の映画)

4.2

ロメールの長編処女作。巨額の遺産を相続するというクロード・シャブロルの実話をもとにした物語。製作はシャブロルのAJYMフィルムで、シャブロルが「いとこ同志」で成功した資金で本作が作られた。
トップカッ
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ある現代の女子学生(1966年製作の映画)

4.0

ロメールが外務省の注文で作った連作短編の一作。撮影はアルメンドロス。フランスでは1965年に女子大学生が全大学生の43%になった。パリ第11大学で学ぶ女学生ドゥニーズ・パドヴァンの日々を描く。
ドゥニ
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パリのナジャ(1964年製作の映画)

4.0

パリの国際大学都市で生活する女学生ナジャを描くロメールの短編。ナジャのパリ散策をデッサンする。ロメールの盟友となる撮影のネストール・アルメンドロスと本作で初めて組んだ。パリを生き生きと喜びに満ちて撮っ>>続きを読む

愛のコリーダ 修復版(1976年製作の映画)

5.0

大島渚の「赤」が氾濫する。タイトルの赤字、赤襦袢、緋毛氈、赤い傘、日の丸、赤い紐、そして血。冒頭は松田瑛子と芹明香だ。二人は藤竜也と中島葵の情事を覗き見する。芹明香と中島葵が嬉しい。藤竜也と松田瑛子が>>続きを読む

ヘカテ デジタルリマスター版(1982年製作の映画)

4.3

ダニエル・シュミットがダグラス・サークのように撮りたかったに違いないメロドラマである。二人の出会いは振り返りからだ。イスラム建築の回廊で月明かりに背中向きでローレン・ハットンが立っている、見つめるベル>>続きを読む

戦場のメリークリスマス 4K 修復版(1983年製作の映画)

5.0

大島渚は「赤」だ。本作ではなんと言っても「赤い花」である。デビット・ボウイが大量の赤い花を摘んで来て、しかもムシャムシャ食べてしまう。服従はしないという抵抗が「赤い花」で見事に描かれる。少年時代に不良>>続きを読む

拳銃魔(1949年製作の映画)

5.0

ルイスの神々しいマスターピースである。全てのショットが美しく、語り口はクールで、若い二人をエモーショナルに鮮烈に描く。クレジットタイトルは夜の雨だ。タイトル開けで少年バート(ラス・タンブリン)が現れる>>続きを読む

静かについて来い(1949年製作の映画)

4.5

雨の夜だけに犯行される連続絞殺事件を描くフライシャーのフィルム・ノワール。原作はアンソニー・マン。トップカットは大雨の路面をうろつく女の足だ。「水」の映画だ。奇怪なのは捜査のために作った「のっぺらぼう>>続きを読む

パスポートのない女(1950年製作の映画)

4.2

キューバのハバナを舞台に密入国シンジケートを潜入捜査するルイスのフィルム・ノワール。冒頭、車内から男を尾行して金取り立てようとして、男が逃げて車からに轢かれるまでのワンカット!前作「拳銃魔」を彷彿とさ>>続きを読む

秘密指令(恐怖時代)/秘密指令 The Black Book(1949年製作の映画)

5.0

アンソニー・マンと名カメラマンのジョン・アルトンが職人技で光と影の極致を作りあげた傑作。フランス革命でロベスピエールが失脚するテルミドール反動を描く歴史劇である。
【最短の説話】
トップタイトルは革命
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その女を殺せ(1952年製作の映画)

5.0

ため息が出る美しさと緊密さだ。フライシャーの文句なしの傑作である。裁判で証言するマフィア幹部の未亡人をシカゴからロサンゼルスまで列車で護送するフィルム・ノワールだ。敵は誰か?罠、裏切り、取引き、相手を>>続きを読む

暴力団/ビッグ・コンボ(1955年製作の映画)

5.0

ルイスの最後のフィルム・ノワールである。スタイリッシュに全てが決まる美しいフィルムだ。夜、光と影、スモーク、ネオンサイン、ジャズ、拳銃、大胆な構図やアングルショット。撮影はジョン・アルトン。ワンシーン>>続きを読む

裸の拍車(1953年製作の映画)

5.0

賞金目当てでお尋ね者を護送する5人の旅の欲望と愚かさを骨太に描くアンソニー・マンの傑作西部劇。「高さ」の映画だ。マンの重要な「高さ」の主題がロッキー山脈を舞台に全編を貫く美しいフィルムだ。冒頭から崖の>>続きを読む

秘密調査員/秘密捜査官(1949年製作の映画)

5.0

ルイスの財務省Tメンもの。ビッグフェローの巨額脱税事件を捜査する。列車が来るカットで始まり、列車が去るカットで終わる。制作はロバート・ロッセン。コロンビア映画配給。ルイスは風格がでてきた。これ見よがせ>>続きを読む

夜のストレンジャー(1944年製作の映画)

4.6

アンソニー・マンが初めて個性を出したと言われる初期の注目作。冒頭はアジア戦線。当時まだ太平洋戦争中なのに映画にしていることに驚く。そしていきなりの列車脱線事故が凄まじい。マンは座り芝居以外は長回しが多>>続きを読む

Tメン(1947年製作の映画)

4.3

偽札シンジケートに潜入捜査するTメンをセミドキュメンタリー映画に描くアンソニー・マンのフィルム・ノワール。財務大臣が前説、全編ナレーションで潜入捜査を工程順に説明しながら描いていく。ローアングルの端正>>続きを読む

私の名前はジュリア・ロス(1945年製作の映画)

5.0

ジョセフ・H・ルイスの出世作。冒頭はロンドンの大雨だ。ずぶ濡れのニナ・フォックがアパートに駆け込む。掃除婦ジョイ・ハリントンに嫌味を言われてなかなか顔が見えない。元恋人ローランド・ヴァードの結婚式の招>>続きを読む

ボディ・ガード(1948年製作の映画)

4.3

フライシャーの初めてのフィルム・ノワール。警察でいきなりの殴り合いが凄まじい、ガラスが割れる、フライシャーの十八番だ。いきなり、派手に、がフライシャー流である。警察をクビになったローレンス・ティアニー>>続きを読む

必死の逃避行(1947年製作の映画)

4.5

アンソニー・マンの瑞々しいフィルム・ノワールだ。マンが作家性を開花させたと言われるフィルムである。冒頭の強奪場面、トラックをスティーブ・ブロディが走らせてレイモンド・バーの弟が足をかけていた荷台から墜>>続きを読む

高い標的(1951年製作の映画)

4.1

リンカーン暗殺計画の実話に基づくアンソニー・マンの列車サスペンス。マンの「高さ」の主題は、疾走する列車からの落下、突き落し、列車出発であわや轢死になる車両下のアクション、車両の上に逃げるなど満載だ。ト>>続きを読む

たそがれの恋/グレイト・フラマリオン(1945年製作の映画)

4.2

「百中百中」の曲芸撃ちフラマリオン(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)の悲運を描くアンソニー・マンのバックステージ物。冒頭、メキシコシティの劇場の歌とパフォーマンスにゆったりと誘われる、突然響く銃声と>>続きを読む

脱獄者の叫び(1953年製作の映画)

4.2

ルイスは「水」の作家だ。本作はルイジアナの川、沼が舞台となりルイスの真骨頂である。波紋を引きながら泳ぐ、ボートやカヌーが水面を滑走する。木々ごしに川を滑走するボートを得意の横移動撮影で捕らえるショット>>続きを読む

罠を仕掛けろ(1949年製作の映画)

4.5

罠、スパイ、裏切り、誰が敵か解らないのがフライシャーの世界だ。本作は罠の仕掛けあい、密度の濃いフィルム・ノワールになっている。フライシャーはいきなり殴る。殴り出したら凄まじい手数の殴り合いになる。フラ>>続きを読む

望みなき捜索(1952年製作の映画)

4.3

ジョセフ・H・ルイスは「火」と「水」だ。子供たちが乗った飛行機が火を吹いて不時着、水辺で救出を待つ物語である。「火」の主題はエンジン爆発、少年がライターでガソリンを引火させる、居場所を知らせようと焚き>>続きを読む