アニマル泉さんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

アニマル泉

アニマル泉

映画(711)
ドラマ(0)
アニメ(0)
  • List view
  • Grid view

カモ(1949年製作の映画)

4.0

記憶喪失の兵士(ビル・ウィリアムズ)が捕虜虐待の汚名を晴らすべく真犯人を突き止めるリチャード・フライシャーのフィルム・ノワール。状況が示されず、ビルの行動と共に自分が殺人犯の容疑者であるという意表を突>>続きを読む

夜よりも深い闇(1946年製作の映画)

4.5

ジョセフ・H・ルイスは端正で美しい。ルイスは最小限のカット数で的確に描く。
トップカットの電話のアップに手がインして顔のアップへパン、一気に引いて回転扇ごしの室内の俯瞰のフルショット、この大胆なメリハ
>>続きを読む

ベラ・ルゴシの 幽霊の館(1941年製作の映画)

4.2

"怪奇スター”ベラ・ルゴシ主役のジョセフ・H・ルイスの異常心理映画。死んだはずなのに生きてる妻(ベティ・カンプソン)、処刑された娘婿が生まれ変わったみたいな弟(ジョン、マクガイアが二役)、正常なルゴシ>>続きを読む

脱獄の掟(1948年製作の映画)

5.0

アンソニー・マンのシャープなフィルム・ノワール。冒頭から脱獄までのスピードと緊張感が素晴らしい。一切無駄がなく一直線にグイグイ引っ張られる。
「高さ」が主題だ。脱獄、ラストの落下、要所は縦の運動になる
>>続きを読む

愛と希望の街(1959年製作の映画)

5.0

大島渚の長編処女作。犯罪から貧困や社会を問う大島のスタンスが早くも確立されている。鳩が戻ってくるのを悪用した少年の犯罪という設定が見事だ。「青春残酷物語」の美人局や「少年」の当たり屋につながっていく。>>続きを読む

明日の太陽(1959年製作の映画)

4.2

大島渚の処女作の短編。6分。
松竹新人紹介のフィルムである。大島の演出は新人らしく溌剌として、意外にも洒落ている。十朱幸代が持つ「赤い傘」がまさに大島の主題でありハッとなった。のちに大島作品で頻出する
>>続きを読む

危ない話(1989年製作の映画)

4.2

第二話を黒沢清が脚本・監督。友達の山荘を借りて執筆中の石橋蓮司に編み笠男二人が襲いかかる。妄想と現状がごちゃ混ぜになる。黒沢清は音で畳みかけて恐怖を煽るのが上手い。食堂で編み笠に怯える石橋蓮司を加藤賢>>続きを読む

神田川淫乱戦争(1983年製作の映画)

4.5

黒沢清の処女作。カラースタンダード。
神田川を挟んだアパートとマンションという設定が素晴らしい。マンションで母親に犯される受験生をアパートに住む女二人が救出しようとする。戦争映画、ミュージカル映画がゴ
>>続きを読む

日本春歌考(1967年製作の映画)

4.3

大島渚は「再現」する。本作では少年たちが469番(田島知子)を犯す妄想が再現される。「再現」されるとどうなるか?「死」が待っている。「絞死刑」では処刑され、「東京戰爭戦後秘話」では自死する。本作はアナ>>続きを読む

青春残酷物語(1960年製作の映画)

5.0

大島渚の出世作。瑞々しい傑作だ。同じ年にゴダールの「勝手にしやがれ」が公開されている。「勝手にしやがれ」は撮る喜びに溢れているが、「青春残酷物語」は怒りのエネルギーが爆発する。
桑野みゆきと川津祐介は
>>続きを読む

東京戦争戦後秘話 映画で遺書を残して死んだ男の物語(1970年製作の映画)

4.3

大島渚は常にオープンだ。本作は若者たちとの共同製作である。大島は既成のシステムを破壊して、オープンに映画界以外の才能と集団で新しい映画作りを模索してきた。当時の大島組は特異なパルチザンと化している。ち>>続きを読む

絞死刑(1968年製作の映画)

5.0

1958年に起きた小松川高校事件を題材に死刑執行の是非を問う大島渚の野心作。リアルな処刑場のセットを作り密室劇と妄想が大胆に混在していく。6つの章で構成される。①Rの肉体は死刑を拒否した。②RはRであ>>続きを読む

飼育(1961年製作の映画)

4.3

大江健三郎の芥川賞作を松竹退社直後の大島渚が撮った大胆な作品である。終戦末期の長野の村に米軍捕虜、疎開者など異人たちが入ってきて大混乱に陥る物語だ。大島は長いワンシーンワンカットで描く。アップフォロー>>続きを読む

儀式(1971年製作の映画)

4.5

ATG10周年記念作品でキネ旬1位の大島渚の代表作。大島は「破壊と共存」だ。本作では家制度が崩壊して様々な仕切りが曖昧になって共存していく。「生と死」河原崎健三は満州に生き埋めにしてきた幼い弟の声を聞>>続きを読む

太陽の墓場(1960年製作の映画)

4.2

釜ヶ崎を舞台に闇商売で血や戸籍を売る愚連隊と暴力団の抗争を大島渚がディープに描く。シネスコカラー。撮影は川又昴。新人の炎加世子と佐々木功を主役に抜擢した。
通天閣、大阪城、ドヤ街、真っ赤な夕日。
大島
>>続きを読む

夏の妹(1972年製作の映画)

4.3

沖縄が本土復帰した年の夏に撮影された大島渚の創造社最後の作品。デッサンのようにスピーディーに撮られている。大島はオキナワを題材にしたかったのだと思う。大島の主題は「赤」だ。いきなり青い海に赤字でタイト>>続きを読む

新宿泥棒日記(1969年製作の映画)

4.5

アナーキーでアングラでエネルギッシュ。才気煥発な大島渚が70年代の新宿を描く、いかにもゴダール以後の作品だ。
大島は「赤」だ。本作はモノクロ・パートカラーだが赤を表現する所はカラーになる。赤いドレス、
>>続きを読む

マックス、モン・アムール(1986年製作の映画)

4.5

大島渚が1980年代に「戦メリ」と本作の2作しか撮れなかったことは映画史の大きな損失である。「愛のコリーダ」以降エロスの極限を描いてきた大島が、遂に本作では人間とチンパンジーの恋愛を描いた。
唖然とな
>>続きを読む

少年(1969年製作の映画)

5.0

犯罪から現代社会を描く大島渚の傑作。実話を元に大島と田村孟が脚本を書いた。「投げる」映画だ。身体を車に投げ出す、突き飛ばす、当たり屋の物語であり、帽子や長靴や様々な物が頻繁に投げられる。よく引っ叩く映>>続きを読む

三つ数えろ(1946年製作の映画)

5.0

何回見てもわからない、しかし毎回その美しさにうっとりしてしまう、厄介な傑作である。この判らなさは鈴木清順の「殺しの烙印」と双璧だと思う。
ホークスは「運動神経」だ。「反射神経」と「スピード」と「的確さ
>>続きを読む

次郎長三国志 第九部 荒神山(1954年製作の映画)

4.5

シリーズの未完の最終作。脚本はタイトル表示されないが橋本忍。冒頭は山狩りだ、石松の敵討ちで都田村の吉兵衛(上田吉二郎)たち三兄弟を匿った新辰親分に打ち入った大政率いる子分たちは、民家に火付けした科で捕>>続きを読む

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)

5.0

発想の大胆さと剛腕の演出、ポン・ジュノの圧巻の傑作である。多摩川のような普通の川にまさかの巨大怪物が現れる。リアリズムで作っているので荒唐無稽な怪獣映画にならない。いきなりジュノの主題の「大雨」だ。川>>続きを読む

異邦人 デジタル復元版(1967年製作の映画)

4.3

カミュの原作をヴィスコンティが映画化した。暑かったから殺人を犯したという不条理劇をヴィスコンティは感情を断ち切るように早いテンポで、エピソードをドキュメンタリーのようにひたすら淡々と提示する。カメラは>>続きを読む

マンディンゴ(1975年製作の映画)

4.2

奴隷市場を経営する家族の没落を描くリチャード・フライシャーの問題作。「全てをストレートに描く」というのがフライシャーの方針で長回しを駆使してありのままを描いている。だからとんでもない映画だ。
まず室内
>>続きを読む

花火(1947年製作の映画)

4.5

ケネス・アンガーが17歳で撮った衝撃の処女作。白黒15分。主役はアンガー本人。本作にはアンガーの全ての要素が既にある。「部分」へのフェティッシュなこだわり、ゲイ、鍛えられた肉体美、夢、暴力、エクスタシ>>続きを読む

ラビッツ・ムーン(1950年製作の映画)

4.0

ケネス・アンガーがフランス滞在時に撮ったファンタジー。17分。
月夜の白いピエロ、娘、悪魔のピエロと兎の物語。イタリアの仮面即興劇から作られた。白黒作品だが月はカラーの絵になる。
「円」「旋回」が主題
>>続きを読む

プース・モーメント(1949年製作の映画)

4.0

衣装についてなフェティッシュなケネス・アンガーの短編。6分。
アンガーの祖母が衣装デザイナーだったとのことで、祖母所有の1920年代の衣装が次々とめくられていく。布地の躍動感がフェティッシュだ。本作も
>>続きを読む

Kustom Kar Kommandos(原題)(1965年製作の映画)

4.0

ケネス・アンガーのフェティッシュな短編。4分。自動車を化粧パフでなでまわす。車への偏執的な自己愛。色彩がサイケだ。ブルーとピンク。

スコピオ・ライジング(1964年製作の映画)

4.2

アンダーグラウンド映画の雄ケネス・アンガーの代表作。29分。
アンガーは「部分」であり「フェティッシュ」だ。本作も改造バイク、実際の暴走族たちの革ジャン、帽子、ナチス印、サソリなどが暴力的にアップで描
>>続きを読む

アタラント号(1934年製作の映画)

5.0

ジャン・ヴィゴの長編第一作にして遺作。肺結核で亡くなった29歳の作品である。
瑞々しい作品だ。ヴィゴは4作しか撮らなかったが、全てが処女作のように瑞々しい。水上生活者を描く。ジュリエット(ディタ・パル
>>続きを読む

新学期・操行ゼロ(1933年製作の映画)

5.0

ジャン・ヴィゴは戦う。映画で世界とどこまで戦えるか?その孤高で美しく痛ましい戦いが本作である。
ヴィゴは感覚的である。ワンカットに直感的な強さがある。
ヴィゴは自由だ。制度を放棄するアナキストである。
>>続きを読む

これがロシヤだ/カメラを持った男(1929年製作の映画)

5.0

映画の世界を切り拓いたジガ・ヴェルトフのマスターピース。革新的な作品はやはり力強く瑞々しい。撮る驚きと喜びにあふれている。トップカットのカメラの上に合成された立つ男、カメラレンズと目の合成が象徴的だ。>>続きを読む

競泳選手ジャン・タリス(1931年製作の映画)

4.2

ジャン・ヴィゴが26歳で撮った2作目。ゴーモン社の依頼による16分の短編ニュース映像である。水泳の世界王者ジャン・タリスが泳法を自ら科学的に解説する。水中撮影、スローモーション、逆回転、多重露光など映>>続きを読む

ニースについて(1930年製作の映画)

4.5

ジャン・ヴィゴの処女作。映画を撮る喜びに溢れている瑞々しい至福のフィルムだ。このフィルムがなければ「勝手にしやがれ」や「大人は判ってくれない」は生まれなかった。ヴィゴが結核の治療のために滞在していたニ>>続きを読む

次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊(1954年製作の映画)

5.0

タイトル順が森繁久彌が初めてトップ、次いで小堀明夫、越路吹雪だ。森繁久彌の至芸、マキノ雅弘の隙無し完璧な演出を堪能出来る傑作である。冒頭、富士山バックの美しい実景が重なる。清水港は次郎長一家の兇状旅が>>続きを読む

La France contre les robots(原題)(2020年製作の映画)

5.0

ストローブの最新作。2020年にネットで配信された10分のデジタル作品である。冒頭、ジャン=リュックに捧げると表示される。ゴダールのことだろうか?湖をバックにストローブの後期のカメラマンであるクリスト>>続きを読む