アニマル泉さんの映画レビュー・感想・評価 - 12ページ目

アニマル泉

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花とアリス(2004年製作の映画)

4.5

少女二人のガーリッシュな日常を描く岩井俊二の本領発揮の佳作。ハナ(鈴木杏)とアリス(蒼井優)の二人がおかしく、愛おしい。冒頭、霜が降りる寒い早朝に二人が登校を急ぐ、電車に乗る、降り過ごす、乗り換える、>>続きを読む

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)

4.5

14歳の少年少女の闇を描く岩井俊二の黙示録。岩井の主題である「手紙」はインターネットの「メール」に変奏されるが、運命の二人がそうとは知らずにやりとりするという構造は同じで本作では悲劇となる。忍成修吾と>>続きを読む

次郎長三国志 第一部 次郎長売出す(1952年製作の映画)

5.0

マキノ雅弘の「次郎長三国志」シリーズの第一弾。走る!走る!躍動感と若さ漲るエネルギッシュな映画だ。冒頭、飲み屋で唸る広沢虎造がヤクザに絡まれて止めに入った次郎長(小堀昭男)が喧嘩に巻き込まれる、虎造が>>続きを読む

モーゼとアロン(1975年製作の映画)

4.5

シェーンベルグ生誕100年に制作されたストローブ=ユイレの初の35ミリカラー長編。ベルリン映画アカデミー出身でドイツ赤軍派に入り獄中待遇に抗議してハンガーストライキで獄中死したホルガー・マインスに捧げ>>続きを読む

アーノルト・シェーンベルクの《映画の一場面のための伴奏音楽》入門(1972年製作の映画)

4.0

ストローブ=ユイレの政治的マニフェストの短編。ゴダールを彷彿とさせる。16ミリ カラー。シェーンベルグが画家のカンディンスキーの反ユダヤ主義を批判する手紙の朗読、ブレヒトの反資本主義演説に途中からシェ>>続きを読む

小間使(1946年製作の映画)

4.0

謎だらけだ!ルビッチらしくない。官能的でない、鋭さがない、キャラクターが不発だ。どうしたルビッチ?本作は20 世紀FOXに移って「天国は待ってくれる」に続く2作目で完成作としては遺作になる。
冒頭のロ
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無責任時代(1937年製作の映画)

4.2

今日1月16日はキャロル・ロンバートが飛行機事故で亡くなった命日。ロンバートの貴重なテクニカラー作品だ。余命いくばくもないと誤診されたヒロインと新聞記者の騒動を描くウィリアム・A・ウェルマンのロマンチ>>続きを読む

グッド・フェアリー(1935年製作の映画)

4.5

プレストン・スタージェス脚本でウィリアム・ワイラー監督のロマンチック・コメディー。二人の才気がみなぎる痛快作だ。孤児院のヒロインというのがスタージェスらしい。冒頭、少女たちと先生の授業がカメラを引くと>>続きを読む

桃色の店/街角 桃色の店(1940年製作の映画)

5.0

恋する文通相手がすぐそばにいるのに気づかず行き違う若者カップルをクリスマスを絡めて描くルビッチのロマンチック・コメディー。多幸感あふれる珠玉の傑作だ。舞台はブタペスト。原作が戯曲なのでほぼ店のワンセッ>>続きを読む

フィラデルフィア物語(1940年製作の映画)

4.0

キャサリン・ヘプバーンが舞台の当たり役を自ら売りこんだヒット作。結婚式前夜の花嫁と男3人の大騒動の物語であり典型的なスクリューボール・コメディーだ。主役はキャサリン・ヘプバーン、ケーリー・グラント、ジ>>続きを読む

素晴らしき休日(1938年製作の映画)

4.3

キャサリン・ヘプバーンとケーリー・グラントのゴールデンカップルをジョージ・キューカーが監督したロマンチック・コメディー。グラントの婚約相手のドリス・ノーランは大富豪の娘、その姉のヘプバーンが絡んで大混>>続きを読む

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

4.5

少女・ウェンディと犬・ルーシーをケリー・ライカート監督が力強く愛おしく描く。シンプルで強くて美しい作品だ。テーマは2つしかない。迷い犬となったルーシー探しと車の修理だ。これだけを描く。映像はシンプルで>>続きを読む

戸田家の兄妹(1941年製作の映画)

5.0

戦時下の小津作品。東京物語の原型のような作品である。小津はレオ・マッケリーの「明日は来らず」を既に見ていたのだろうか?高峰美枝子が素晴らしい。後に原節子が継ぐことになるヒロイン役として輝いている。
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東京の合唱(コーラス)(1931年製作の映画)

5.0

小津安二郎28歳の作品。才能が開花した時期でサラリーマン家族の悲哀を描いたサイレント映画の傑作。直後に撮影する「生まれてはみたけれど」の原型となっている。子供の描き方が抜群だ。菅原秀雄と高峰秀子(!)>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

4.5

30代の4人の女性の幸せを描く濱口竜介の5時間17分の大作。カサヴェテスの「ハズバンズ」に着想を得て真逆に女性たちの物語にしたという。ワークショップを立ち上げて素人を起用して制作した。3部構成からなる>>続きを読む

襤褸と宝石(1936年製作の映画)

4.5

キャロル・ロンバートが圧巻のスクリューボール・コメディーの快作。監督はグレゴリー・ラ・カヴァ。父親のユージン・パレット、狂乱のマンハントゲームの司会のフランクリン・パンクボーンなどルビッチやプレストン>>続きを読む

オペラハット(1936年製作の映画)

4.3

フランク・キャプラの社会派コメディ。莫大な遺産を相続したゲーリー・クーパーを辣腕女性記者が身分を偽り密着してスクープする。キャプラは本作の後にダルトン・トランボの脚本で「ローマの休日」を準備することに>>続きを読む

女性No.1(1942年製作の映画)

4.0

新聞社を舞台にしたジョージ・スティーブンスのロマンチック・コメディー。キャサリン・ヘプバーンはお嬢さま育ちの帰国子女で全米No.1 に選ばれるスター女性記者、スペンサー・トレイシーは叩き上げのスポーツ>>続きを読む

ヒズ・ガール・フライデー(1940年製作の映画)

5.0

結婚式間近なのに様々な妨害があってどうしても結婚できないという、スクリューボール・コメディーの定義どおりのホークス監督作。原作は「フロントページ」本作が異質なのは阻止するのが男のケーリー・グラントであ>>続きを読む

真人間(1938年製作の映画)

4.3

前科者のささやかな幸せを描くラングのメロドラマ。ハリウッド時代の3作目。ニコラス・レイの「夜の人々」につながっていく。ラングの「円」の主題。本作ではレジスターのボタン、コイン、ボウル、懐中電灯、香水瓶>>続きを読む

気まぐれ天使(1947年製作の映画)

4.2

クリスマスに天使が現れるロマンチックコメディー。ヘンリー・コスター監督。
多幸感あふれる作品だ。天使はケーリー・グラント。グレッグ・トーランドの撮影が素晴らしい。ガラス越しのロレッタ・ヤングの登場のア
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幸福の設計(1946年製作の映画)

4.5

ジャック・ベッケルの下町三部作の第1作。宝くじが当たった若者夫婦の運命を描く。原題は「アントワーヌとアントワネット」パリのロケが瑞々しい。俯瞰ショットが印象的だ。ベッケルは「階段」だ。本作は夫婦のアパ>>続きを読む

七月のクリスマス(1940年製作の映画)

4.5

貧乏な若いカップルに大金が転がりこむ騒動を描くプレストン・スタージェスのロマンチック・コメディー。スタージェスの真骨頂は、勘違いに勘違いが重なって思わぬ方向に物語を展開するパワフルさだ。本作に悪人はい>>続きを読む

風の中の牝鷄(1948年製作の映画)

4.5

珍しい小津安二郎の失敗作である。原因は男根主観で作ってしまったからだ。この方向でギリギリ攻めても辛いだけだ。女はもっとしたたかで逞しいのに美化しすぎている。それこそ「ルビッチならどうする?」だろう。>>続きを読む

非常線の女(1933年製作の映画)

5.0

文句なしの小津安二郎のフィルム・ノワールの傑作。サイレント映画。田中絹代の白いドレス、肩紐が落ちるたびにドキドキする、そして煙草を吸う意外性。あるいは何回直しても垂れるほつれ毛。官能的なのだ。フィルム>>続きを読む

男装(1935年製作の映画)

4.5

ジョージ・キューカーの異色作。借金を踏み倒して父と共にキャサリン・ヘプバーンが男装で逃亡する。ヘプバーンとケーリー・グラントの初共演作。
ヘプバーンが素晴らしい!短髪姿が不思議な色気だ。「人生の乞食」
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花嫁凱旋(1936年製作の映画)

3.8

ベストセラーが公序良俗に反すると田舎の婦人団体で槍玉にあがるが、そのメンバーのうら若き乙女こそが作者である。なかなか面白い設定で始まる。ヒロインはアイリーン・ダン。しかし彼女は恋愛経験がなく、メルヴィ>>続きを読む

姫君海を渡る(1935年製作の映画)

3.8

キャロル・ロンバートが主役の大型客船のミステリー仕立てのコメディ。訳ありのお姫様、脱走した殺人犯、各国の刑事たち、強請り屋、が入り乱れて殺人事件が起きる。話の整理が上手くなく、ミステリーかメロドラマか>>続きを読む

ちょっとフランス風(1949年製作の映画)

4.0

撮影所を舞台にしたダグラス・サークのメロドラマ。完璧主義でクビになった映画監督のドン・アメチーが踊り子のドロシー・ラムーアを教育していく話。「マイ・フェア・レディ」に似ている。ドロシー・ラムーアの魅力>>続きを読む

奥様は魔女(1942年製作の映画)

5.0

結婚式の予定が不測の事態の連続で大混乱になるという「スクリューボールコメディ」の定義通りのルネ・クレールの快作。魔女役のヴェロニカ・レイクがフレデリック・マーチを徹底的に振り回す。冒頭に魔女の呪いの歴>>続きを読む

エドワールとキャロリーヌ(1951年製作の映画)

4.5

ジャック・ベッケルの「パリ下町3部作」の1本。アンヌ・ヴェルノンが素晴らしい。よく着替える映画だ。ダニエル・ジェランのベストが見つからなくて大騒動、さらにアンヌがドレスの裾を短く切ったことで夫婦喧嘩に>>続きを読む

Mank/マンク(2020年製作の映画)

4.0

「市民ケーン」の脚本家マンクを描くデビット・フィンチャーの最新作。Netflix制作。
モデルとなったウィリアム・ランドルフ・ハーストやMGMの大プロデューサーであるメイヤー、タルバーグとの確執、オー
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探偵事務所23 くたばれ悪党ども(1963年製作の映画)

4.6

清順らしさの萌芽となった作品。冒頭は米軍基地から流れた闇取引のトラックが疾走、そこへ何故かコーラの販売車が突入して激しい銃撃戦になる。コーラ瓶が粉砕して中身が流れる、そして車が炎上してタイトル。「火」>>続きを読む

ヨーロッパ2005年、10月27日(2006年製作の映画)

4.0

ストローブ=ユイレの初めてのデジタル撮影による短編。12分。イタリア放送教会(RAI)が委嘱した。「2005年パリ郊外暴動事件」の発端となった、北アフリカ出身の若者2人が警察に追われて感電死した事件を>>続きを読む

あの彼らの出会い(2006年製作の映画)

4.5

ストローブ=ユイレが共同制作した最後の長編映画。イタリアの共産主義作家チェーザレ・パヴェーゼの神話を踏まえた対話詩集「レウコとの対話」の最後の5篇を映画化した。
第1話「人類」は地上に降りたゼウスをめ
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労働者たち、農民たち(2000年製作の映画)

4.3

ストローブ=ユイレによるエーリオ・ヴィットリーニの小説「メッシーナの女たち」の第44章から第47章までの映画化。トップカットの森のパン撮影が美しい。木漏れ陽の揺らぎ、川、川の音。そして特異な朗読劇にな>>続きを読む