あんへる

冴えない彼女の育てかた♭のあんへるのレビュー・感想・評価

冴えない彼女の育てかた♭(2017年製作のアニメ)
4.6
【2017年春アニメ作品{全11話+未放送話(#0)}】

冴えカノ第2期

私は加藤恵が恐ろしい。

大袈裟に言ってしまえば、唯一無二にして天上天下唯我独尊。
既存のヒロイン像を見事に打ち壊し、ラブコメものに於ける極大特異点と成り果ててしまった。


率直に言ってヤバすぎる、なんだこれは。(語彙力)
私は劇中何度悶え、唸ったんだろう。
この2期で完全に化けてしまっている。

シナリオのリテイク&ルート追加、原画作業の遅れ…
問題山積のゲーム制作と同時にサークル内の環境も次第に変化していく。
来たる運命の冬コミ、そして…
終始物語に惹き込まれた。特に冬コミのあと、後半部分は圧巻だった。

この作品の構造に関しては1期のレビューでも書いたが、2期まで観終わって如何に自分の考えが甘かったかを痛感した。
テンプレもご都合主義もメタパロも、それ自体がオタク心理を巧みに利用した高度な手法なんでしょ?『はいはいワロスワロスw』って完全にマウント取った気になって鼻ほじ状態だった。

物の見事に騙された。
というか弄ばれた。
更に斜め上からマウントを取り返された。
そう、すべては本作の“メインヒロイン加藤恵”の掌の上だったってことに2期まで観てようやく気が付いた。
なんて恐ろしい子…。

話の流れとして、正直これでは詩羽と英梨々のキャラが立つばかりでいつまで経っても加藤に勝ち目なんてないだろう?ここからどうやって黒髪雪女と金髪ツインテをボコるんだよ?と普通は思う。

だがそれこそが彼女の思うつぼ。
暴力的なまでの周りのテンプレキャラの中で埋没する、埋没しているからこそ物語の中では何よりも異質な存在として存在感を放つ。
つまり特徴がないヒロイン、〈無個性〉とはこの作品に於いては最大最強の〈個性〉と同義なのだ。

リアクションも口調も距離感も誰よりもフラット。
物語に対して強引に適合させてはいるが、普通ならモブとして処理されるキャラクター性。
謂わばこれまでの加藤恵とは、現実的でどこにでもいる女の子である。
1期のレビューで自分は〈ラブコメアニメ〉に〈リアリティ〉は必要ないという趣旨の内容を書いたが、まさに彼女はそれを逆手に取ったキャラクターだと思った。

純粋なラブコメ世界に一滴の現実性を体現する要素が紛れ込んでいる。
彼女は劇中に身を置きながらも、同時に現実世界に近しい存在として、ある意味で一種の観測者のような立ち位置にあるキャラクターなのではないか?と。
そしてこの物語の本質とは、自分の想像の一次元上を行っているんだと。
そう考えると、この違和感にも似た感情とすべての合点がいく気がする。

そこを踏まえた上で整理すると、1期~2期の前半部の綿密な前振り(適切な表現ではないけど)や巧妙な伏線が活きてくる。
そして後半部、メインヒロインの覚醒と同時に美しいタイトル回収が波状攻撃の如く襲い掛かってくる。
ハッキリ言ってお手上げですわ。

もう8話は完全なる神回だよね。
殺人級のヒロイン力を見せつける加藤に悶え殺されかけた。
この時点で大抵の視聴者は陥落しているはず。
バッキャロー、ブラック○ンダーとか大好物だっつーの!!


本当は詩羽や英梨々についても触れるべきだろうが(滅茶苦茶アツい見せ場はある!10話とか…)、加藤恵というキャラクターの造形美に魅了されてしまった以上は最早手遅れ。
だって物語の観測点が固定されてしまったものは今更どうしようもないじゃん。
だから恐ろしいのよ。

極端な話、単純にラブコメものとしては別に物語に彼女が存在しなくても十分成立する。
だが存在している。彼女は物語に介入してしまった。
そして、テンプレと理想が常に殴り合い鬩ぎあっている状況を見せ続けられる。この作品とはそういう類のものなのだ。


あとはOPアニメが非常に素晴らしいと思う。
『優れたOPやEDは、それだけで1つの短編作品となる』って何かの記事に書いてあった気がするが、これはまさしくその通りで、本編とは別に単体のアニメ作品として毎話見入ってしまう程芸術的な1分30秒だった。

キャラの造形というか作画の部分で本編とは違うタッチで描かれているので、人によっては手抜きとか雑な印象を受けるのかもしれない。
これに関しては完全に個人の好みだと思うが、自分の目には美しく映った。
本編の世界観とは少し違う、曖昧で独特な線の水彩画のような映像をこのOPアニメという導入部で敢えて表現することの意味を考えたとき、軽く唸った。
本編内では表現しきれない行間の部分や、ヒロイン達の可愛らしさを上手く補完し、その上別アングルで描いている。
モノトーンから徐々に〈ヒロイン〉という名の絵の具で物語がカラフルに色付くまで、そんなフローがここに現れている気がする。

またこの拘りを感じるOPアニメがあることで、本編にも深みが増し、作品としての格を上げていると自分は思う。


そして次はいよいよFineなんだよ。
いやーなんかもうこの時点で既に吐きそう。←

ところで、この手の震えは一体何からくるものなんだろう…?w


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[主題歌]

OP
春奈るな「ステラブリーズ」

ED
妄想キャリブレーション「桜色ダイアリー」、「青春プロローグ」
(#0)波島出海(赤﨑千夏)「365色パレット」

[挿入歌]

加藤恵(安野希世乃)「ETERNAL♭」、「GLISTENING♭」

澤村・スペンサー・英梨々(大西沙織)& 霞ヶ丘詩羽(茅野愛衣)「DOUBLE RAINBOW DREAMS」

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