あんへる

PERSONA -trinity soul-のあんへるのレビュー・感想・評価

PERSONA -trinity soul-(2008年製作のアニメ)
3.8
ペルソナ3を原典に据えたオリアニ。一応P3本編の10年後(のパラレル)が舞台らしいが、ほぼ設定だけ借りた別物の空気感。
何処となく写実的な艶っぽさの乗ったペルソナシリーズ伝統の副島イラスト準拠のキャラビジュと、部分的ながら目黒将司氏の洒落たサウンドデザインが光る。

兄弟の絆(家族愛)がメインテーマなんだが、観念的で哲学的な描写が多くとにかく取っ付きにくい。それでいて終始だらだらと気が滅入りそうな暗い展開が続く余りにも悲しいお話。
まさに一昔前のアトラス作品然としたスタイル。だが重要な箇所ほど説明描写や冗長な台詞に頼るのではなく、意味を含んだ行間・余白・余韻で語る凛とした脚本を意識したような気骨のある作風に感じた。
またシナリオ以上にキャラクターの心情やその機微の描かれ方や表現が秀逸で、常に脳内で解釈を巡らせながら物語へ引き込む。非常に文学的で美しいストーリーテリングの手法だったと思う。

諒の目的や行動原理が明らかになる終盤の展開は彼へ深く感情移入してぐっと胸が締め付けられる。そして何より兄の真意や弟たちへの想いを悟った慎が流す涙があまりにも切ない。
すべてを知った上でもう一度初めから諒の描かれ方を見直すと、もはや序盤からカタルシスを堪えられない。

ちなみにP3から大人になった真田と(元)天田少年?の出演があったが、流石に無理矢理感があったかな。もうペルソナ使えないのも残念すぎる。
ただ「ペルソナ発現には年齢制限がある」って本作独自の設定はちょっと深いと思ったね。
大人になると“しがらみ”に囚われて一途ではいられなくなる、かぁ。
「ペルソナ」を冠する作品として、本流とは別角度のアンサーを提示してくれた。
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