レインウォッチャー

メイドインアビス 烈日の黄金郷のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.5
相変わらずベースの面白さ(と容赦のなさ)やアニメーションの質は間違いないのだけれど、一期〜劇場版と比べると運びが重くなった印象が残る。

アビスの階層をひとつずつ進んでいった前期と比べ、今作は1クール通してほぼ「成れ果て村」の一箇所に留まっていることが大きい。
そのルーツやそこに住む人々の歴史の語りに多く時間が割かれ、主人公勢はみんなどこか「お客さん」な風味もあるのだ(特にナナチはお休み期間が長い)。

もちろんリコ・レグ・ナナチだけで物語を引っ張っていくのは燃料不足とはわかるけれど、この異世界探窟アドベンチャーを越えて神話へと風呂敷が広がりそうな感じ、グランドライン以降の『ONE PIECE』みたいな流れにならないかとちょっと心配してみたり。

アビスのメイン要素でもある「階層の呪い」や、今期の成れ果て村における「価値」の仕組みなど、この作品では、外から見れば異常に見えてもその環境では大きな揺るぎないルール・前提となってただそこに在る「システムや構造」に対する描き込みが常になされている。

それにどう抗うか、あるいは受け入れるのか、そしてやがて慣れていく先に何があるか、といったアプローチは物語をスリリングにすると同時に登場人物の造形に多様性(多義性?)を与えているし、この作品を単なるファンタジーに終わらせずに穴の外…わたしたちの現実に持ち帰る可能性を与えていると思う。あと、単純によく考えつくなこんなの、という感嘆も。
思うに、これが『メイドインアビス』から受け取る何よりの遺物なのではないだろうか。