ヨーク

ダンジョン飯 第1期のヨークのレビュー・感想・評価

ダンジョン飯 第1期(2024年製作のアニメ)
4.2
めちゃ面白かったですね。
ちなみに俺は原作漫画は読破済み。九井諒子に関しても『竜の学校は山の上』を表紙に惹かれて初版で買って、この人すげぇ! となって以来のファンなので今回のアニメ化には中々に感慨深いものがありましたよ。まぁここはアニメに関しての感想文なので原作漫画すげぇ! はほどほどにしておくにしても、最初に書いたようにこのアニメ版もめちゃ面白かった。
まぁ非常に優秀なスタッフが揃っててかつて魔法が主要テーマな秀逸なアニメ『リトルウィッチアカデミア』を送り出したトリガーが制作をするというのだから、そうそう滑ることはなかろうと思っていたが実にいい仕上がりでしたね。そこは現実を忠実に再現するという無難さも素晴らしかったが、原作の敢えて固めにかっちりと決まった画をぬるぬると動かすアクションシーンなどもアニメならではの喜びがあって素晴らしかった。他にアニメ版に於ける楽しみとしては役者陣の演技もあったが、こちらもイメージ通りでありつつその期待を越えてくる部分もあって言うことない出来だったので、そこも素晴らしかったと言う外ない。
そんな感じで非常に出来の良い原作ありのアニメ化だったのだが、ただまぁ本作に関してはやっぱ原作がすげぇっていう感想になってしまうなというところはある。基本的には『ウィザードリィ』を基調とした古き良きファンタジーもののダンジョンRPGが基調となっている作品なのだが、舞台となるダンジョンの「死を拒む」という設定と共に様々な種族や立場の登場人物たちが各々の物語を重ねていく作劇の完成度が凄いんですよね。生まれて生きて死んでいくことの循環のシステムを細かい設定と共にキッチリ描いてそれを各キャラクターの物語に重ねていくのだから全く恐れ入るレベルの作劇技術である。正直、漫画はもちろん小説や映画やアニメやテレビゲームなどを全部含めても日本のファンタジー作品の最高到達点の一つとまで言ってもいい出来栄えのものだと思う。それほど優れた原作漫画に今回のアニメ化は音や色や動きを加えたわけだが、まぁ原作の良さを見事に底上げしている感じで素晴らしかったですね。とはいえそこは映像作品としては原作とは全く別の魅力を発見させるほどのものというわけでもないから、アニメとして超が付くほどの傑作とは言い難いのだがまぁこの原作をキチンと映像化できただけで超は付かなくとも傑作にはなるので別にいいかなってとこですよ。
この一カ月ほどは本作を見ながら『アニマルズ』という現在公開中の環境問題を扱ったドキュメンタリー映画を思い出していたのだが、あの映画の主役であった二人の少年少女がこの『ダンジョン飯』を見たらどういう感想を持つだろうかなというのが気になっていた。環境が循環していることとそれにまつわる人間の生き方、その根本にある食が描かれている作品なのでこれはこの先大人になる人に触れてほしい作品だなって改めて思ったんですよね。トールマン(いわゆる人間)やエルフやドワーフやオークやハーフフット等々の様々な立場の存在の違いと対立と協調を描きつつ、種族だけじゃなくて性別とか思想とか利害とかは割と簡単に越境できてしまうのではないだろうかと思わせてくれるいい意味での楽観性がいいんだよね。果てには魔物と人間や現在と過去という時空の境界すら…となってしまうのだからすごいものである。
ま、その辺が描かれるであろう完結編にも期待大である。アニメ版という括りではまだ未完なので断言はできないが、非常に出来がよく面白いアニメでしたね。おすすめ。
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