面白かった。
ある種のミームのようにネット上では流通している「埃塗れの泥臭いガンダム」を見たい人にはマストな作品ではないだろうか。かく言う俺も『機動戦士ガンダム MS IGLOO』とかは大好きな人間なので本作『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』もかなり楽しめましたよ。やればできんじゃん、くらいには言いたくなるほど好みなガンダムであった。
本作のえらいところはガンダムシリーズに詳しくない人が、何なら初ガンダムとして見ても分かるであろうというところで、地球に残ってる人類(連邦政府)と宇宙に出た人類(ジオン)が戦争をしているということと、ガンダムがクソ強いということと、戦争はクソだということだけ前提として知っていれば得に引っかかるところもなく見ることができると思う。戦争はクソ、というのはガンダム関係なく人類共通の認識である(と思いたい)ので実際には地球と宇宙で戦争してるのとガンダム超強いということだけでいい。
玩具を売るためだけに存在していた従来のロボットアニメ(まぁそこはガンダムも同じなのだが)とガンダムが大きく違うと言われたことの一つとしては人間同士の戦争というものを一歩踏み込んで描いたということがあり、本作もそれに倣った構成になっている。特に『機動戦士ガンダム』のみならずガンダムシリーズのほぼ全てに通底している少年兵の姿とそのような年少者を戦争に巻き込むというテーマはひと際強く描かれている。これは非常にガンダムだな~~、唸らされてしまう展開で良かったし、ほんの少しボタンが掛け違えばアムロもあのようになっていたのかもしれないと思わされてしまう。また、子供だけでなく軍人として戦争に参加する大人だって大人だから平気で戦争をできるわけでないということも嫌というほど描かれるし、むしろ本作のメインストーリーはそこだろうというところでもある。
そして何より、これは原作である『機動戦士ガンダム』での一年戦争での戦史がそうなのだから仕方ないところがあるとはいえ、本作の舞台はオデッサとその周辺なのである。もっと言えばウクライナである。別にアジア戦線でも同じお話はできたと思うし『08小隊』との繋がりを匂わせるならそっちの方が良かっただろうとさえ思う。でもウクライナなのだ。
まぁ、そこは色々思っちゃうよな。敢えてオデッサにしたんだろうし、ジオンと連邦両者のトップの人物の描写は全く描かずにひたすら戦争の現場を描いたということも察するところがあるよ。その辺はオチでも気を使っていて、どっちが勝ったとか負けたとか正しいとか間違ってるという描写がなかったのも好感を持った。
本作はそこらへんのバランス感覚が非常に良かったと思うな。つい先日『シビル・ウォー』の感想文で、アメリカ内戦へと至った経緯が描かれていなくて前線の戦闘描写ばかりで残念、という感想文を書いたが、本作に関してはガンダムブランドという部分を上手く使って状況説明は最小限に留めながら分かる人には分かるという中で戦場の末端にいる人間たちを上手く描いていたと思う。もちろん、ガンダム知らない人に対しても上記したように、地球と宇宙の戦争でガンダム超強いという分かりやすい楽しみ方ができるようになっているので優しい作りになっていると思いますね。
総じて非常に優れたガンダム作品だと思いました。ネトフリ入ってる人はとりあえず見るくらいでもいいんじゃないかな。ガンダム知らなくても面白く見られると思いますよ。