Larx0517

冤罪~弁護士エマの挑戦~のLarx0517のレビュー・感想・評価

冤罪~弁護士エマの挑戦~(2017年製作のドラマ)
3.7
すべてが一筋縄ではいかない。

冤罪を晴らす。
手がかりを引き寄せれば、予想外の「大モノ」まで引きずり出され、さらに絡まってゆく。
イギリスだけに留まらず、アメリカに飛び火してゆく。

新たな真実が、波紋を広げる。
寝た子を起こす。
「敵」が多すぎる。
文字通り、四面楚歌、孤立無援。
警察、SO15(テロ対策指令部)、被害者家族、政治家、権力者、アメリカ、そして依頼人まで。
それぞれの思惑が交錯する。
人間の闇の部分にも焦点が当たる。

「善意は仇になる」
「善意か悪意かなんて
もう分からない」

これぞイギリスドラマの醍醐味。
キャラクターがストーリーを動かすための駒ではない。
見ているものがため息をつくくらい、理不尽な行動をする。
キャラクターが「生きている」。
キャラクターがストーリーを引きずり回す。

イギリスドラマにしては、かなり大がかりな話。
膨らませた伏線をラスト2話で回収する為に、最後はかなり急ピッチになっている。
具体的には、被害者の両親のエマへの態度が「豹変」するのには違和感が残った。
それまでたんねんにキャラクターの心情を拾い上げてきただけに。

これだけのキャラクターを描き分けているのは見事。
そのキャラクターに2段階にズームインするカメラワークが印象的。
イギリスドラマに慣れた自分でも、驚かせられる展開も幾度かあり、飽きることなくラストまでつないでいる。

職人技を思わせる、派手さはないが、確固たる質を誇るイギリスドラマの典型。

本作で主人公エマを演じた、ヘレン・マックロリー。
ドラマ『ホームランド』のダミアン・ルイスの妻でもある。
彼女は、今年2021年4月16日に、癌により亡くなっている。
彼女の演技が新たに見れることがないのは残念。
しかし彼女が残した、いぶし銀の演技の輝きは、映画やドラマに残され、永遠に陰ることない。
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