「そうか、オレ今幸せなんだ」
毎日の暮らしのなかで、見過ごしがちで、ささかだけど、大切な、幸せのかけら”タマネギ”を味わえる。
異性愛者には”ありふれた”ものが、同性愛者、特に日本の同性愛者には、手に入れづらかったりする。
だからこそ、かけがえのなさが際立つのだろうか。
興味深いのは、同棲までしているカップルなのに、キスシーンどころか、手をつなぐことさえほとんどない。少なくとも、ドラマのなかでは。
シロさんの性格のせいでもあるのだろうが。
(だからこそ、京都でシロさんから手を繋いだ時、ケンジの「死ぬの⁈」になるのだが。)
このキャラクターの設定の妙により、そこにあるはずの性的な匂いをさりげなく、しかし注意深くぬぐいとる。
これが、BLに免疫のない成人男性向けの漫画雑誌『モーニング』での連載が、受け入れられた要因のひとつではないだろうか。
その映像化のドラマでは、さらに顕著に見て取れる。
具体的には、何度か二人がソファに座るシーンがある。
ケンジは、シロさんにしなだれるように座る。
しかし実際はソファの上での2人の距離は縮まらない。
別の視点から見れば、分かりやすい、これみよがしな、スキンシップがなくても、二人が互いに大切にし合っているのが、ヒシヒシと伝わる。
それはドラマ中のケンジのように、カヨコさんに教わらなくても分かる。
同性愛者ではない人々の琴線にも触れる、普遍的なリアリティを出しているのは、原作のせいでもあるが、ドラマならではの演出、そしてなによりキャストの演技によるものが大きいのは一目瞭然。
アドリブであろう、エンディングの2人の掛け合いは、まだまだこの世界にひたっていたいと毎回思わせる。
号泣することはないが、涙腺がゆるみ、表面張力を破り、ホロリとさせらるシーンが散りばめられている。
シーズン2になり、オープニングソングが変わった。
シーズン1のOAU『帰り道』。
どこかせつなさを漂わせた、優しい気持ちにさせる名曲だった。
シーズン2では、大橋トリオ”カラタチの夢”。
“この世で一番大切なものはねぇ
何て言いかけて
はにかんだ君の笑み
夕立木立 焼きたてパンを齧り
味わう幸せ 君と生きる幸せ”
“君と生きる幸せ”のおすそ分けは、味わい深く、優しい気持ちにさせてくれる。
賞味期限はない。