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FM999 999WOMEN‘S SONGSのmaのレビュー・感想・評価

FM999 999WOMEN‘S SONGS(2021年製作のドラマ)
4.5
「女って、なに?」

16歳の清美がそうつぶやいた途端、脳内に響き出すDJの声。ラジオ番組「FM999」は、清美の悩みに応じた名曲をセレクトして届けるという。清美は目を閉じた先でさまざまな女と出会い、「女」であることと向き合っていく。


良かった〜〜〜〜〜〜〜〜、、

各エピソードにテーマがあり、それに合った3曲が登場する。

現れる女たち、みんなヘアメや衣装が個性的で可愛くって、曲もどれも頭に残る。出演しているのも、歌手や女優だけでなく、ダンサー、ラッパー、芸人などなど。初めましてな方もいれば、「おお〜!!!!」と声をあげてしまう方もたくさん。

1発目から宮沢りえのギラッとした女っぷりにぶん殴られ、八代亜紀や研ナオコの貫禄にドキッとし、ゆりやんレトリィバァや眉村ちあきの力強い明るさに励まされ、真矢みきやMEGUMIのこざっぱりとしつつ哀愁漂う姿に苦しさを覚え、、

番組のイントロも「FM999」のジングルも心地いい。




以下、特に印象に残った女を✍🏻(ここから長くなるぞ〜!!)




・そこだけ雨が降る女:菅原小春

「私は誰の人生も干渉しないし干渉されない 人と比べるのがいちばん下品だと思うな」

デフォルトで雨だから不幸じゃない。何度も繰り返し叫び、孤独という鎧を自ら拵えて不幸ぶる女。諦めたように受容するのはとても楽だからね。「全然やまないじゃん 期待させやがって」泣きたいような笑いたいような顔。誰とも比べたくないと言いながら自分をしっかりラベリングしてきつく締め付ける。そのどうしようもなさが、すこし愛おしい。


・サイの女:塩塚モエカ

「働くって罠だらけだから 敵だらけだから もっとさ どんなことにも傷つかないくらい 心のさ 皮膚ぶ厚くしてさ すごいスピードで駆け抜けたいって思うんだよね サイみたいにさ」

サイは地上でいちばん強いし馬くらい速い。でも目がすごく悪くて敵も味方も分からないし、止まれないから沼に飛び込んでしまって無様な姿を晒したりする。そんなサイのように、愚直なまでに強く忙しなく、他人を振り払って生きる女は、まるでガラスの靴でコンクリートの上を全力疾走してるみたいだ。


・女に恋した女:モトーラ世理奈

「まあ名前なんてどうでもいっか とにかくロマンティックなら」

歌にするほどのことじゃない、恋した人が女なだけ。魅力的な人に恋をするだけ。「同性を好きになるのはどんな気持ちなの?」こんなくだらない質問をどれだけ浴びせられるのだろうね。「同じだよ なめんなよ」


・泥棒猫の女:ともさかりえ

「恋はね 言わないと存在してないのと同じだよ 誰も知らないまま消えてくんだよ 今のあなたの気持ちが存在してないのも同然なんだよ ねえ それってなんだかむなしいじゃない?」

人から奪い、恨まれ、蔑まれる。それも恋だと言う。許されない恋などほんとうはないのだと言う。それでもわたしは、「伝えて人を傷つけるくらいなら、自分がむなしいままの方がマシだ」と思う。絶対に伝えない誠実さ、があると思う。


・魔法少女の女:三浦透子

「〝かわいい〟は鎧なんですよ 甲冑なんですよ」

他人から手渡される「かわいい」も、投げつけられる「かわいくない」も、もう要らなくなってしまうときがある。全部に悲しくなってしまうときがある。自分だって自分の価値観で、無邪気に人を測ることがあると分かっているからこそ、ルッキズムの根深さを思い知る。自分なりの「かわいい」で自分の全身を補強するのは、もう誰からも傷つけられたくないからだ。


・ポテトがあがる音きく女:長井短

「冷えちゃったらもう元には戻んないよ」

(おもいっきりマクドナルドって言っちゃった)って思って笑っちゃったけど、あのティロリティロリで曲が進行するのめちゃくちゃ好きだ。マカロニえんぴつがマクドナルドのタイアップで書き下ろした「青春と一瞬」もティロリ入ってるね。わたしはマクドナルドの塩たっぷりのあつあつポテトが大好き。冷えたポテトは殺す。


・時間を止めた女:MEGUMI(エピソード8は全員豪華)

「ピノキオはいいよね 嘘ついただけで鼻高くなる」

自分から若さと美しさを奪い去ろうとする時間に必死に抗う女。老いること、美しくなくなることが何より怖くて怖くてたまらない。美しくあろうとする思い、手放しで尊いとは言えないよね。ルッキズムは呪いだよ。比較するわけではないけれど、「まゆげの女」の対にいる女かもしれない。


・???:???

ぼろぼろ泣いてしまった。



「女であることに怒りを感じるけれど、不思議な愛しさがごちゃ混ぜに」

この感覚が自分の中に生まれたのはいつからだっただろう。

「女」とは結局なんなのか?女であることでつけられた傷も、受けた恩恵も、女だからと飲み込むしかないのだろうか?

同じ女でも、同じ生き方はひとつとして無い。鼓動はイントロ。わたしはわたしの歌をうたうのだ。
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