男性の人口減少によって男女の役割が逆転する「大奥」を彷彿とさせるし、ジャック・ドゥミの「モン・パリ」を観た時これを現代的な価値観でリメイクすべきと思ったけど、すでに漫画であったのか。「そんなの女なんだから当たり前じゃん」と言われるような事象を男の立場から描くことで相対化してみせる構図そのものが、性差別を浮き彫りにしていて面白いが何とも苦しい。だって同じことを言っても女より男の声に耳を傾けられがちだってことだから。劇中ではちゃんと「いや新しい男みたいに語ってますけどそれ女にとっては当たり前だから」とツッコミを入れていたりして抜け目ない。妊娠も結婚もしない上野樹里が母親としてどうあるべきか自問自答して出した答えとそれを斎藤工が後押しするのが、すごく良かった。子供は家庭で育てるべき、夫婦は同姓であるべき、結婚すべき、女は育児、男は仕事（たまに育児手伝う）だけの窮屈な価値観じゃ傷ついたり苦しむ人がいるから、そこへのカウンターとして男も妊娠、女も仕事優先などを描いた物語なんだ。斎藤工ってめちゃくちゃ美形だし声良いし映画愛ある人だし何やっても上品なので、井浦新みたいに？こういう小粒な良品にもっともっと出てほしい。
