漱石枕流

WeCrashed ~スタートアップ狂騒曲~の漱石枕流のレビュー・感想・評価

4.0
起業モノに目がない上に、アン・ハサウェイが出ているというので楽しみにして観た。そしたら、ちょっと面食らってしまった。たしかにタイトルからして単純明快なサクセスストーリーではないというのはわかるのだが・・・

このミニシリーズは『となりの精神科医』と同様、ポッドキャストを原作にした実話の映像化作品であり、とにかくなにより〝不愉快極まりない話〟である。

創業者でCEOの男は、能天気野郎。ひたすらノリで会社を運営。事業では出血が止まらないのに「損失は成長のために必要な投資」をくり返す。一方、妻は「世界の意識を高める」という抽象的なことに夢中な反面、実際は自分のことしか考えていない。気に入らない社員がいたら、ばっさりと切り捨てるのだ。

鑑賞中、私はこのふたりが目障りで「さっさと排除されてくれないかな?」とばかり思っていた。

もっとも会社を急成長させたのは事実のようだし、投資家からバンバン出資を引き出した点はすごい。あの孫正義まで巻き込んで、フォーブスの〝世界で最も影響力のある100人〟に選ばれたというのだから。起業家としての才能はほんとうに申し分なかったのだろうと思う。

しかしでもそれでも私の不快感が消えないのは、ふたりが王様と女王様をやっているところである。もうとにかく社員や投資家が気の毒でならなかった。

ただ、テレビドラマとしてはよくできており、最後まで飽きることなく楽しめた。そして鑑賞後も深く印象に残った。優れた作品である、という点は強調しておきたい。

あと、最終話のラストでアダム・ニューマン本人の映像が流れるのだが、そこでの発言が心に沁みたことも付け加えておく。

[ドイツ語吹替音声+日本語字幕]2022/04/19-30 Apple TV+
漱石枕流

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