あかつか

地獄が呼んでいるのあかつかのレビュー・感想・評価

地獄が呼んでいる(2021年製作のドラマ)
4.5
ある日突然天使とやらに「○日後にお前は死ぬ」と予告された市民が、公衆の面前で謎のゴリラ集団に惨殺されるという事件が連続で発生。

これを罪深い人間に対する神のお告げだと主張する落合陽一風味の若き宗教指導者。つまり現代版ソドムとゴモラ?

おそろいの服でテレビ局に圧力をかける様はかつてのオウムを彷彿とさせる。はたして人の法で裁かれない罪人に対して罰を与える者は神か悪魔か?

テレビ中継で懺悔させられる本人・家族たち。それを笑い、相互監視を始めるヤジウマたち。罪を赦すのがキリストの役割だったはずなのに。神への畏れによる自律って本当に自律っていえるの?

監督はヨン・サンホ。罪とか罰とか救いとか報復とか赦しとかを描いた作品だと『我は神なり』や『豚の王』があるけど、本作のような「意味わからん事象に対峙する無力な人々」という画は、ご存知『新感染』でも描かれているところ。

前半の主人公、事件を捜査する刑事に『息もできない』のヤン・イクチュン。だいぶ年を召された。前半は少なくも神を信じていたとみえる教団幹部が、後半モロに悪徳ゼネコンみたいになっててやや残念。起きた事象をムリクリ神のメッセージに変換作業する幹部会議。中世か。

勁草書房に『予言がはずれるとき』って翻訳本があって、予言を教義の中心におく宗教では、予言がはずれたときに活動が活発化すると指摘されている。「あとにはひけねぇ」ってことかな。

もうね、冒頭から始まるめちゃくちゃな天誅映像からして、「こんな大風呂敷広げて一体どうラストで落とし前つけんの?」と思わないではいられず、外出先でも見てしまった。つまりSNSやテレビ画面という安全地帯から「予告」を受けた人を見るヤジウマと一緒。広げた風呂敷をたたむ必要はないのだが、十分落とし前はついたラスト。ちょっと読めたけど。

ビックリしたのが、死の予告をする天使が、完全CGかと思いきや『パラサイト』の娘ダヘちゃん。なぜそんな使い方するかね。

あと、字幕の「預言」と「予言」がゴチャゴチャになってたような気がしたけど、預言者とは神の言葉を預かって伝えるモーゼとかムハンマドとかをいうのであって、予言者は「1999年7の月…」のノストラダムスのことです。
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