アキヒロ

ステーション・イレブンのアキヒロのレビュー・感想・評価

ステーション・イレブン(2021年製作のドラマ)
4.7
99.9%の致死率を誇るウイルスによるパンデミックでほとんどの人間が死んだ20年後の世界で活躍している旅する楽団を描くという設定の時点で勝ちを確信したけど、やはりそうだった。ヒロ・ムライが監督の時点で、見るっきゃないドラマだった。

といっても、現在と20年前の世界が行ったり来たりするわけだけど、その編集っぷりがエピソードを重ねるにつれ凄みを増していき、一体何を見てるのかと興奮した。

博物館と、ずっとハムレットばかりやる楽団、どちらも芝居の持つ人智を超えたパワーを知っているからこそ、それをどうしていくのかで確信を100%持てない姿。芝居にリアルが治療のように入り込むシーン。そして6冊しか印刷していないSF作品『ステーション・イレブン』の意思をそれぞれに受け継ぐ者たち。そして、『ステーション・イレブン』の作者と元旦那が考えていたこと。20年前、元旦那に振り回されうまくいかずイライラしてた人たち。

などなどが怒涛のように押し寄せる。文明がなくなった世界で、旅する楽団は何ができるのか。もはや「楽団が〜」ではなく、実生活の中に演劇が浸透していた主人公と、その原作がとてもパーソナルかつ優しい人間に作られていたことに号泣。パンデミック後に部屋に閉じこもっていた少女と中年男2人が、部屋から出ていく前に起こった出来事には、フィクションの偉大さにおののいたと思う。天才が生み出す作品は、技術がともなってなくても、なぜかよくわからないが、未来とリンクし、人を動かす力があるのだ、ということが徹底しているのが最高。

最後の最後は、ちょっと雄弁すぎたかな。でも、あっさり分かれてよかった。

とにかく全員見て、感想をボソボソと喋りたいところ。マーク数少なすぎやぞ。
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