辛くて叫びたくなるような瞬間の連続だとしても、好きだと言ってくれた大切な人が姿を消したりしても、ずっと友達だよねと声に出さないと確かめられなかったとしても、いつか全て忘れてしまう。誰かの記憶に残っている微かな思い出には少しずつモザイクがかかって、時が経つと真っ白になる。だから静かにやり過ごそう。泣きたい夜が続いたとしても、それは、いつか忘れられる。いつかのことならば、今、覚える必要はない。ちょっと退屈なぐらいがちょうどいい・・・確かにそうかも。
あんな風にイキツケがあるといいな。いつものメンバーでカウンターに座って、友達が飲み物や食べ物を出してくれる。風邪で寝込むと家まで来てくれる。猫だって探してくれる。毎日、よくそんなに話す事があるなとは思うけど、自宅だと思えば、そんな感じかもしれない。
私は、どちらかと言うとお店の人と馴染みになる事を避けてきたし、そんな簡単に友達になんてなれないと思ってきた。商売なんだから裏があるぜ、と考えてしまう浅ましい人間なのだ。そう言えば、美容院も車のディーラーも、選択基準は気が合うかどうかだな。友達じゃないからって言われるのが怖いだけかもしれない。退屈なぐらいで良いのだ。
